ビーバドゥービーの快進撃が止まらない。昨年リリースしたデビュー・アルバム『フェイク・イット・フラワーズ』がUKアルバム・チャート初登場8位を記録し、Z世代のガール・ネクスト・ドアSSWとして世界中から高い評価と、中年からティーンまで幅広くリスナーを獲得した20歳のビー・クリスティ。今春、そんなビーの新EP『Our Extended Play』のリリースが決定し、先行シングル“Last Day On Earth”のMVが公開された。
レーベル・メイトのThe 1975のマシュー・ヒーリー(Vo)とジョージ・ダニエル(Dr)をプロデューサーに迎えたこの曲は、常に時代のリアリティを反映させてきたThe 1975のエモーションと、ビーの不純物ゼロでストレートな物語性がナチュラルに融合している。90年代へのオマージュたっぷりのノスタルジックなギター・ループは、イントロから既にキラー・チューンの匂いを漂わせているし、00年代のポップ・アンセム的ヴァイブスが注入されたアップビートに乗るオノマトペ的リリックは、誰もが口ずさんでしまうほどキャッチーだ。
さらにビーは、《世界も終わるし、そろそろ最後にするけど/もし私達がもっと親切だったら、もっとうまくいってたかな/予定もないし、私が書いたこんな曲にノッて裸で踊るの》と歌う。つまり私達が経験した暗くて寂しいコロナ禍の生活を、ディストピア映画のようなキラキラとした過去に変身させようとしているのだ。
ロンドンで最初のロックダウンが始まった直後に作られたという本作は、「こうなることがわかっていたら、『日常』の最後の日にやりたかったこと全て」が描かれている。“Last Day On Earth”というタイトルが象徴的だが、まるで人類滅亡後の地球で壊れたラジオから流れる孤独な曲のようにも聴こえてくるし、何千年後の未来を生きる人類に対して「こんな日常もあったんです」と伝える強い意志を持った遺言のようにも思える。
ビーは誰もがコロナ禍に感じた、「戻らない日常」への後悔、そして切なさを作品に昇華してくれた。あなたは一人ではない、と彼女から救いの手を差し伸べてもらった気がする。(前田侑希)
ビーバドゥービーの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。