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ジョン・ステニアー(ヘルメット、バトルス)
バトルスのライブを観たことがある人なら、ものすごく高い位置にセットされたあのクラッシュ・シンバルと、そこから叩きつけられる強力な打音が印象に残っているだろう。
90年代からヘルメット〜トマホーク、そしてバトルスと渡り歩いてきたジョン・ステニアーは、ハードコアがポスト・ハードコアへ、メタルがポスト・メタルへと移る時代のなかから登場した名ドラマーだ。ヘヴィなアンサンブルを支えるだけの腕力とスタミナがあることは前提として、変拍子からミニマルな反復にまで対応できる柔軟性を併せ持っているのが彼の秀でたところだろう。ヘルメットの代表作『ミーンタイム』(1992年)の時点でそのたしかなスキルを発見できるが、キャリアを通してその存在感が際立ったのは、やはりバトルス以降ではないだろうか。
というのは、バトルスは明らかにポスト・ロック以降のテクノロジーとロック・バンドがどう向き合うかという命題を内包しており、ことドラムに関して言えば、プログラミングのビートがいくらでも可能になった時代に人力でビートを生み出す意味とは何か、をつねに問うているからだ。サンプリングも駆使するバトルスのライブではしかし、ステニアーのタフなドラミングが不可欠であり、そのことが音楽のフィジカルな快楽について示唆する。“アトラス”のあのシャッフル・ビートは、どうしたって人間的だ。(木津毅)
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