2020年7月16日、欅坂46は本日開催の「THE LAST LIVE」をもって5年間の歴史に一度幕を閉じることを発表した。そして明日10月14日(水)からは「櫻坂46」として新しい坂を上っていく。
正直に言ってしまうと活動休止発表からしばらくは、戸惑いや悲しみに打ちひしがれる思いだった。でも映画『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』を観てからは、これがグループの運命だったという納得と、今後の活動への前向きな感情が上回っている。「細く長く」続けるか、それとも「太く短く」燃え尽きるか。そのどちらかと言えば、欅坂46はやはり後者だったのだ。
2016年4月に“サイレントマジョリティー”でデビューして以来、欅坂46は既存のアイドル像にとらわれない特異な存在感を示してきた。デビュー当初に先行していたイメージ「笑わないアイドル」、「大人への反抗」、「シリアスな楽曲」は、確かにもともと彼女たちに備わっていたものではない。しかし「欅坂46は世の中に何かを届けていくグループ」という意識は、間違いなく彼女たち自身が生み出したものだ。特に4thシングル曲“不協和音”以降の楽曲は、メンバーの感情も大きく反映されてきたように思う。それは楽曲にしてもダンスにしても、ただ与えられたものをこなすのではなく、メンバーなりの解釈を加えながら曲に宿る「主人公」の姿を体現してきたからだ。
欅坂46はいわゆるアイドルのファンに限らず、街中でたまたま彼女たちの楽曲を耳にしたり、もしくはテレビでパフォーマンスを観たりした人にも何かを考えさせる力があった。そんな意味で欅坂46の表現は世間に対してであり、その分、時には強い風当たりもあったし、メンバー自身もグループの在り方に厳しい目を向けていた。だからこそ欅坂46のパフォーマンスは、私たちの想像以上に体力と精神力を消耗するものだっただろう。
映画の中で振付師・TAKAHIROは、大人の責任とは何かを聞かれて「見続けること」と答えた。そのあとに続いた「どう思いますか?」の問いかけは、彼女たちの活動を見てきた人々にも向けられている。もしかしたら答えはそれぞれ違って、中には「活動を止めること」という考えもあるかもしれない。でも、欅坂46に心を奪われて活動を追ってきた身としては「新たな坂を上っていくメンバーを、そして坂道とは違う場所へと歩き出しているメンバーを応援していくこと」しかない。欅坂46という特別な季節を全力で駆け抜けてきた少女たちの姿は、大勢の心の中に勇気や強さとして残り続ける。すでに溢れ出してしまいそうな「よくやってくれた、ありがとう」の気持ちを胸に、ラストライブまでしっかり見届けたい。(渡邉満理奈)
欅坂46の活動休止と櫻坂46としての新たなスタートに寄せて
2020.10.13 12:00