パール・ジャム、サウンドガーデン、グランジの発祥地を描いた映画『シングルス』を語る

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「ローリング・ストーン」誌の元看板記者だったキャメロン・クロウ監督の映画『シングルス』。

映画に使用されていた音楽とサウンド・トラック盤が、当時台頭しつつあったシアトル・シーン、グランジ・ロック、あるいはオルタナティブ・ロックに世界的な脚光を集めたことで有名だが、そのサウンド・トラックのリイシュー盤がアメリカで5月29日にリリースされることとなった。

このサウンド・トラック盤は当時、映画公開前の3か月前にリリースされ大ヒットしたことでも知られているが、今回のデラックス・エディションはCD2枚組としてリリースされ、新しく加えられた2枚目のCDには劇中バンドとして登場したシチズン・ディック(実際にはパール・ジャム)の楽曲も収録されている。


リリースのプロモーションとしてさまざまなアーティストのインタビュー動画が公開されているが、たとえば、アリス・イン・チェインズのショーン・キニーは映画公開当時の思い出を次のように語っている。

「今でも覚えてるのは、あれはまさにキャメロン・マジックだったっていうことだね。シアトルなんていう田舎町に暮らしてる登場人物数人だけの話なんだから。当時はいわゆる『グランジ』なんてなにも知られてなかったんだからね」

特にキャメロンがシアトル・シーンに注目して映画の題材にしたことについては、訃報が報じられたばかりのクリス・コーネルが次のように語っている。

「やっぱり外から来た人だと分かることってあったんだろうね。俺たちにはまるで見えてなかったことが見えていたというか」

「映画で紹介されているバンド全員が世界的に知られる前に、原案が練られて撮影もされたものだから、それがすごく重要なみどころになっているよね。シアトル・シーンとシアトル・ムーブメント、それとグランジ・ムーブメント、これについては『シングルス』っていう映画を1本観ればすべて分かるようになってるんだよ」

また、2010年にキャメロン・クロウとの離婚を経たものの、彼の映画のために作曲も行ってきたハートのナンシー・ウィルソンは次のように語っている。

「キャメロンには人にはわからないことを聴き取る力があるの。実際になにかが起きる前にそれを感知できる人なのね」

また、ナンシーはシアトル・シーンのサウンドについては次のように説明している。

「エディ・ヴェダーが聴こえたらすぐに分かるし、アリス・イン・チェインズだったらあのざらついたすごいハーモニーですぐそれと分かるし、サウンドガーデンもすぐに分かる。それがシアトル・サウンドだったのよ」


パール・ジャムのマイク・マクレディは次のように当時を振り返っている。

「俺にはすべてが新しい体験だったからね。映画をシアトルで撮影して、俺たちの曲を使ってくれるんだっていう。スクリーミング・トゥリーズも使われるし、サウンドガーデンの“Birth Ritual”も使われるっていうんだからね。この曲はめっちゃくちゃいい曲なわけだからさ。

だから、この映画に関われるっていうのは本当に嬉しいことだったんだ。シアトルではあの時、音楽がどう盛り上がってたのかっていうキャメロンの視点があって、ついでにラブ・ストーリーもついてくるっていうね。

あの頃はシアトルにいると本当に刺激的だったよ。それだけでも面白かったのに、映画まで作るんだってことになると、ちょっとシュールな感じだったよね」

マッドハニーのマーク・アームは撮影当時のことを次のように振り返っている。

「実はキャメロンは、ぼくに台詞を1行用意してくれてたんだよ。だけど、(脚本の読み合わせで)『やっぱりやめようか』って話になったんだ(笑)。申し訳なかったけど、ぼくは明らかに役者向きじゃないから(笑)

でも、この映画の時点でシアトルは、『ローリング・ストーン』誌とかそういう全国誌で話題になってたんだ。だから、将来的にはもう『タイム』誌とか、全国の一般誌でも話題になるんだろうなとは思ってたよね」


そしてアリス・イン・チェインズのジェリー・カントレルは、映画製作がもたらしたインパクトについて次のように語っている。

「すごい大事件だったよ。もともと俺たち全員がものすごく小さな規模で、つつましい形で活動を始めてたんだからね。それがハリウッドのメジャー映画に関われるだけじゃなくて、キャメロンなんていう良い人と一緒につるんだりできるわけだし、しかも、音楽のことをものすごくかけがえなく思ってる人だったから。その後はもう、状況がいっぺんに変わったよ」

スクリーミング・トゥリーズのバレット・マーティンは次のように当時のことを振り返っている。

「レーベルは俺たちのアルバムのリリースをどんどん延期しててさ。というのも、『シングルス』のサウンド・トラックがものすごく売れてて、それが俺たちの収録曲“Nearly Lost You”への関心もたきつけてたからね。映画はサントラのものすごい後押しになったし、俺たちのアルバムについてもそれは同じことだったんだ。

あの映画はあの時代の素晴らしい音楽を思い出させるし、あのサウンド・トラックはそれを見事に捉えてるんだ。っていうか、あのサントラがあの頃の音そのものってことだね。サウンド・トラックが、当時の瞬間と時代を瓶詰めにしたみたいなものなんだ」


ナンシー・ウィルソンの妹でハートのアン・ウィルソンは、当時のシアトルについて次のように語っている。

「音楽の歴史がすべてがあそこまで集中したような場所って、他にはないとわたしは思うけど」

そして、キャメロン・クロウ自身は当時のシアトル・シーンとシアトルについて次のように語っている。

「すごい見ものだったよ。ポップ・カルチャーを満載した貨物列車が、最高速度でみんなの町に突っ込んでくるみたいな勢いがあってさ。

この映画はあの頃のシアトルが醸し出していた雰囲気や、空気へのバレンタイン・プレゼントみたいな、そんなささやかな映画のつもりで作ったんだよ。それがある時代の一幕を捉えたスナップショットみたいになって、しかもその瞬間を世界中の人たちが拡大して確かめようとしたんだよね」

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