レキシ @ 新木場スタジオコースト

12月3日の札幌で幕を開けた、8都市9公演『レキシツアー「もう〜い〜くつ遺跡めぐるとお正月?」』の4本目にあたる新木場スタジオコースト2日目。以下レポートでは、セット・リストの掲載は控えるけれども、いくつかの演奏曲表記などネタバレになってしまう部分が含まれるので、今後の公演を楽しみにしている方は閲覧にご注意を。新作を出しているわけでもないし、ツアーのバンド・メンバーの他にはゲストが招かれているわけでもない。なのに、笑い続けて時折びっくりして、気がつけば2時間半を越えてしまっている。レキシ流エンターテインメントの極致を見るライヴであった。

フロアの宙空には、レキシの家紋入り提灯がいくつも吊り下げられている。年末感たっぷりのオープニングSE と歓声の中で提灯が灯ると、ステージには今年のイヴェントやフェス出演でも活躍してきたバンド・メンバーが待ち構えていた。ギターに健介さん格さん(奥田健介 from NONA REEVES)、ピアノ&コーラス=元気出せ!遣唐使(渡 和久 from 風味堂)、ベース=御恩と奉公と正人(鈴木正人 from LITTLE CRETURES)、ドラムスには伊藤に行くならヒロブミ(伊藤大地 from SAKEROCK)という顔ぶれである。そして朱の紋付+ゴールドのグラデがかった袴という華やかな姿を見せるレキシ a.k.a. 御館様(池田貴史)。いきなり、和の情緒を台無しにしながら洋楽ネタで年末感を煽り立ててくれる。ファルセットとヴィブラートを効かせた、なりきりの節回しも最高だ。

フロア一面にファンク・サインならぬ狐サインが揺れる“武士ワンダーランド”からは、お馴染みのナンバーが連発。ゆったりとしたスウェイを自分で誘っておいて、その光景に「気持ち悪いし、どうかしてる!」と漏らす池ちゃん。御恩と奉公と正人×伊藤に行くならヒロブミの、艶とキレをひたすらキープし続けるリズム・セクションがマジで素晴らしいのだが、続けて放たれる楽曲で池ちゃんは歌いながら、金八先生やピンク・レディーのモノマネを繰り出し、まったく音に浸らせてくれない。この才能の無駄遣い感こそがレキシである。好き勝手にネタを注ぎ込んでいたくせに、今度は「どう考えても飛ばし過ぎやろ! こんなに曲続けてやったらあかんで」と嘆いている。アルバムでは齋藤摩羅衛門(斉藤和義)とのコラボ曲だった“姫君Shake!”では、紋付羽織を脱ぎ捨ててブギーなロックンロールを繰り出し、巻き起こるシンガロングを捩じ伏せてまで「やりたい、これ!」と滑らかに“ジョニー・B・グッド”に移行、チャック・ベリーのノリノリなステップを披露してしまう。

「これ、遣唐使のタオル? 人が汗拭いてるときに、おまえは奏でるねえ」と鮮やかに奏でられるピアノに茶々を入れ、「どうもあらためまして、ケビン・コスナーです。気安くファースト・ネームで呼ぶな。昨日、ちゃんとやったから、もう今日は自由! 途中で帰るかもしれない。なんだったら、実家に帰るかもしれない。そんなライヴがあったっていいじゃない!」と完全に野放し状態なわけだが、喋り倒す時間が一応、休憩の時間でもあるらしい。「聴いてください。“川の流れのように”。弾くな! あ、今、自分で効果音付けたろ!」と止まらない音遊びで笑わせながらロマンチックなファンキー・バラードへと向かう。そしてブリージンなピアノが心地よい“古墳へGO!”では、「K-O-F・・・U-N!」のハンド・サインに視界を奪われ、池ちゃんのオルガン×健介さん格さんのギターが激しいデッド・ヒートを繰り広げていく。艶かしいベース・ソロに触れては「指がエロい!」とコメントを添えることも忘れない。

ステージに仰向けに寝転がり「あ、ごめん、自由になりすぎた。自由って一体なんだ〜い!? あ、俺の中のオザキ出ちゃった」「今だーけはー○○の歌ー、聞きーたくないよー。聴きたい? じゃあやろっか。ダーイチ、○○しよっ! あれ、知らないの? 『東京ラブストーリー』……怯えた目で俺を見ないっ!」と、この無軌道な展開に付き合わされる大地くんも大変である。いやもう、MCに限らず楽曲においても、メンバーが誇る演奏力と高い音楽理論を引き出しながら凄まじい展開を見せてゆくのだ。「暦の上ではディッセンバー!!」と叫びながらアース、ウインド&ファイア“セプテンバー”に傾れ込んだり、渡辺美里が飛び出したり、更には年末らしい名曲が持ち込まれたり。アーティスト・グッズの印籠ケース(携帯ケース)に触れつつ披露された新曲は、「どういう曲かと言うと、恋にも仕事にも疲れ果てたキャリアウーマンが、ニューヨークで働いてたんだけど、単身バリ島に、バカンスで行って、恋に落ちるという曲、ではありません。レキシじゃねえし! 水戸黄門が、印籠なくしちゃったって曲です」という“僕の印籠知りませんか?”。無闇にヘヴィなブルース・ロックが余計に可笑しかった。

《甘えん坊》の歌い出しと同時に音が鳴り出す“甘えん坊将軍”では、ここぞとばかりに「あまちゃん!」やら何やらと何度かフェイントを入れる池ちゃん。メンバーが引っ掛かると勝ち誇ってVサインを掲げたりしている。クセのあるヴォーカルの節回しを投げ掛けては、ネタ元である『渡る世間は鬼ばかり』のセリフを、登場人物の相関なども踏まえて説明してゆく。その後には、メンバーが入れ替わりで見事なピアノの連弾を披露する一曲。遣唐使・正人・健介の3人が並んで余りにもカッコ良く決めたフィニッシュに、オーディエンスは大喝采である。「もうやだ! 今日一番湧いたよ! そんなん、俺だって出来るよ!」「つくづくレキシは、バンド・メンバーに支えられております。そしてそれを支えてくれるのは、夜空に輝く……お客さんでございましょう!」と、スタジオコーストの巨大なミラー・ボールが煌めき、2013年レキシの「武士納め」こと“きらきら武士”で、大団円に向かっていくのだった。実は、アンコールにもめちゃくちゃ笑える展開が待ち構えていたのだが、これは観た人のお楽しみということで、伏せさせていただきたい。バンド・メンバー、特に健介さん格さん&御恩と奉公と正人の、意外な面のポテンシャルに唸らされたりもする。そして何より、知識・経験・才能を異様な瞬発力で笑いへと昇華させる、レキシの卓越した音遊びに魅せられた一夜であった。(小池宏和)
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