ART-SCHOOL @ 新木場スタジオコースト

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『「BABY ACID BABY」TOUR 2012』

ヘヴィなディストーションの轟音で《愛し合う為生きてるって/感じたいだけ それだけなんだ/そうなんだ》と歌われる“BABY ACID BABY”に始まり、本編ラストが途方も無い光量で発光するかのようなホワイト・ノイズの中《確かに此所にいる僕は/確かに此所にいる君は/微かな光のほうへ ほうへ/今を生き抜く様に》と歌われる“We’re So Beautiful”で締め括られた、『BABY ACID BABY』のツアー・ファイナル。今のART-SCHOOLの活動そのものが、ART-SCHOOLの歩んで来た道を包容し、抱擁する。そんな感触があった。

今年から木下理樹(Vo./G.)と戸高賢史(G.)の2人組となり、サポート・メンバーに中尾憲太郎(Ba.)と藤田勇(Dr.)を迎えた新作『BABY ACID BABY』はシカゴでレコーディングされ、8月にリリースされた。同作を携えて9月からスタートしたツアーは全国25本。ツアー終盤のワンマン公演以外にも、藤田の在籍するMO’SOME TONEBENDERら各地でロック・シーンをリードするアクトをゲストに迎えたほか、うち9本ではかつてのART-SCHOOLメンバーでもある櫻井雄一がドラマーを務めたことも、話題となった。

ART-SCHOOL @ 新木場スタジオコースト
戸高による、透き通るほどに美しいアルペジオのリフレインから鳴り始める“CRYSTAL”、中尾ののたうつようなベース・ラインが牽引しノイズが渦を巻く“INA-TAI (BREATHLESS)”。「キノコってゆうな。静かな曲を4曲ぐらいやろうと思います……静かって言ってもですね、フツフツと燃えてる感情があって……くっ」と自分で説明しながら苦笑したりしている木下だが、そのブロックの中で荘厳なシンフォニーのように響き渡る“Pictures”とそれに続く“Love will found you, in the end”。『BABY ACID BABY』に収められた、オルタナティヴなギター・ロック・サウンドの最も美しい部分が、今回のセット・リストの要所要所を押さえるかのように配置され、ライヴ全編に一本の道筋を通してゆく。

ただし、今回のライヴがただ美しく、落ち着いたムードだったのかと言えば、そうではない。むしろ逆だ。各メンバーが放つ音は百戦錬磨のブレの無さを受け止めさせるのに、ときに威勢の良い4カウントの声を出してビートを繰り出す藤田がそうだからなのか、アンサンブルをグイグイと牽引してゆく中尾のベース・プレイがそうだからなのか、或いはそんなヴァイブレーションに乗るバンド全体の化学反応がそうだからなのか、前のめりで鮮烈なパフォーマンスになっているのである。前編成でのラスト・ライヴとなった昨年末COUNTDOWN JAPAN 11/12のステージが、不可侵と思えるぐらいの「完成」を描きながら押し寄せるステージだったことを思い返すと、今回のART-SCHOOLは意識的・積極的と言えるほどのフレッシュな呼吸が繰り返され、それゆえに「続いてゆく」という感触を受け止めさせるものになっていた。

ART-SCHOOL @ 新木場スタジオコースト
あらゆる刹那を切り取ってきたART-SCHOOLが、「続く」物語を描き出すというのは、ちょっと奇妙な話だ。しかしそこには、単なる音楽ではない、ART-SCHOOLのロマンが宿っている。木下も戸高もそれぞれに別プロジェクトを抱えながら、ART-SCHOOLを終わらせるという決断をしなかった。或いはデッド・エンドであるかもしれない刹那をまた描くために、ART-SCHOOLは続く。我々はそれを観たいし、聴きたいと思う。

前のめりなバンドのヴァイブに焚き付けられたのか、今回のオーディエンスは熱いノリで声を上げ、メンバーの名を呼んでいた。ダブル・アンコールで木下は、櫻井雄一も見守っていたステージの上から、「俺がダイヴしたら、支えてくれますか?」とオーディエンスに問いかける。普通はそれって訊いてからやるものじゃないとは思うのだが、慎重にたどたどしく話すステージ上の木下は、それを確認せずにはいられない。ART-SCHOOLの刹那の連鎖は、やはりそんなふうにナイーヴな約束のもとに生み出されるものなのだな、と改めて感じられた。バンドがどのような形で続くのかは分からない。しかし、続くことを予感させるステージを繰り広げたことが、重要だったのだと思う。

ART-SCHOOLは12/16に『BABY ACID BABY』ツアーの台湾公演を敢行し、また12/31には、幕張メッセで行われる『COUNTDOWN JAPAN 12/13』への出演を予定している。(小池宏和)


セット・リスト

01: BABY ACID BABY
02: SHAME
03: 水の中のナイフ
04: Negative
05: サッドマシーン
06: CRYSTAL
07: WHITE NOISE CANDY
08: INA-TAI (BREATHLESS)
09: Chelsea Says
10: JUNKY'S LAST KISS
11: 左ききのキキ
12: DIVA
13: イディオット
14: FLOWERS
15: クロエ
16: LOVE/HATE
17: Pictures
18: Love will found you, in the end
19: MISS WORLD
20: BOY MEETS GIRL
21: WISH LIST
22: ロリータ キルズ ミー
23: UNDER THE SKIN
24: FADE TO BLACK
25: We're So Beautiful

Encore-1
26: I hate myself
27: スカーレット
28: あと10秒で

Encore-2
29: 車輪の下
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