the band apart @ SHIBUYA O-EAST

2月にフランスのバンド=GUSHと東名阪ツアーを行ったthe band apartは、この5月に再び彼らと相見えるべくフランス・ツアーを敢行。今回は、凱旋帰国公演にして2012年初のワンマンとなる『SMOOTH LIKE BUTTER Parisien & New Songs』である。序盤のMCで荒井岳史(Vo./G.)は「こう見えても意外と保守的なところがあってね、外国、馴染めない」とか何とか海外バンドとの交流を持つバンアパのヴォーカリストにしては確かに意外なぼやきを吐き出していたけれど、歓喜のサプライズも盛り込まれた熱狂のステージを繰り広げてくれた。

平日ど真ん中の公演もなんのその、ソールド・アウトのO-EASTでは、メンバーの登場と共に前線へとオーディエンスがどっとひしめきながら押し寄せていた。オープニング・ナンバーは、木暮栄一(Dr.)の鋭利なマーチング・ビートに導かれるようにしてブライトな音響アンサンブルが展開される“Falling”だ。さっそく高度なコンビネーションを叩き付けてくれる。ハーフ・パンツで軽やかにステップを踏む原昌和(B./Cho.)のふくらはぎがまた随分引き締まって見えるのだがどうだろう。一方、中央の川崎亘一(G.)の足元はスウェードのブーツだ。大量のエフェクター類を踏み分け、激しいアクションを交えてプレイするには、ちょっと暑そうな気もするが。

セット・リストは最新アルバム『Scent of August』の収録曲がやや多め、そこに過去作のナンバーが散りばめられるという形。手数が多く鋭いのに、柔らかなスウィング感も受け止めさせる木暮のスティック捌きが見事な“Game, Mom, Erase, Fuck, Sleep”、トロピカルなコンビネーションをドンピシャリで決めてゆく“FUCK THEM ALL”と、簡単そうに濃密なバンド・グルーヴを練り上げてしまう。ここで原は「マリー・アントワネットが殺されたコンコルド広場に行ってきまして。そういう古いの好きなんだけど、ただモノリスがあるというだけでね。なんてことない広場で。ガックリして帰ってきました」と脱力の名調子MCである。

なのだが、演奏が再開されるや否や、ファンキー成分が粉塵爆発を巻き起こしてしまうような“The Sun”へ。あのMCから即座にこのテンションに到達してしまう瞬発力には舌を巻く。コーラスの開放感がヤバい“bind”の後には原の豊かに動き回るベース・フレーズが牽引する“Snow Lady”と、このブロックでは『detoxification e.p.』の収録曲群も披露された。そんな近年のバンアパのモードから連なる形で、荒井は「(公演の)タイトルにも書いてあるんですけど、新曲をやります。まあ、聴いてみてください」とシンプルに紹介。最新のバンアパを観る、今回のハイライトと言ってもいい時間帯だ。

新曲はここで纏めて3曲。タイトルは明かすことが出来ないけれども、なんとそのすべてが日本語詞であった。1曲目は、ハイエナジーにしてアップリフティングな加速感を誇るナンバー。2曲目は、雄弁な音のフレーズの絡み合いにストーリーテリングが映える、極めてロマンチックでメッセージ性豊かなナンバー。3曲目は、鐘の音のように美しく鳴り響くギター・イントロを荒井がミスして仕切り直した(「いま間違えたの? こういう曲なのかと思った」と原)が、スリリングに展開して強靭なフックも残すというナンバーであった。スタイルは3曲ともそれぞれだが、しっかりバンアパの日本語曲になっていた。どの曲も素晴らしい。

楽曲それぞれの素晴らしさもさることながら、バンアパが日本語詞を解禁したという事実がやはり大きな驚きと喜びをもたらしてくれていた。テクニカルなコンビネーションを追求するだけには留まらず、作品を生み出すごとに歌に強靭なフックが盛り込まれるというキャリア(特に僕は『Adze of penguin』〜『the Surface ep』〜『Scent of August』の流れにそのことを強く感じていた)の先に、この日本語詞ナンバーがあったかと思うと、やはり感動的だ。そう、バンアパの日本語詞は、単なる「解禁」ではなく「到達」なのだ。日本語詞のための作曲スキルと自信を、彼らが遂に獲得したのだと思う。

そんなバンアパ史に残る決定的瞬間を共有したあとは、ただ熱狂を貪るように楽しめば良いだけだった。幻想的に歪んだ川崎のギター・フレーズからパンキッシュに転がり出す“light in the city”ではオーディエンスが一様にハンド・クラップのフレーズを決め、“I love you Wasted Junks & Greens”のアンセミックなコーラスを巻きながら、メンバーは一人ずつスポット・ライトを浴びて扇動的なフレーズを繰り出してゆく。もともと凄腕プレイヤーの寄り集まりではない、少年時代からの友人同士である彼らが、それぞれにキャラの際立った姿と演奏技術を見せつけてゆくさまはやはりすこぶる格好いい。

フランスの土産話については、「びっくりするぐらいフランスパンばっかり出てきた」「ほぼ酒浸りだった」「歩行喫煙がすごかった」「やっぱり日本が一番ですよ」(以上・荒井)「俺は……インターネット。回線が遅い。その点、日本は優秀」「コンビニが無いんですよ。なので夜中に小腹が減ると、水を飲むしかない」「オイーッスとボンジュールの間ぐらいで挨拶してた」「まあ、フランス行ったことある人だっている訳でしょ。別にそんな日本と変わりませんよ」(以上・原)と、なんだかなあ、なことばかり話していたけれど、川崎は観光&ショッピングを、木暮はカフェ通いを、それぞれ楽しんでいたそうだ。

それでも最終ブロックは、“photograph”から“Eric.W”で一息に巨大なうねりを生み出してしまう。ずるい、と言いたくなるような圧巻の流れ。これをやるためにわざと脱力MCを挟んでいるのではないかと穿ってしまうほどだ。本編を“Can't remember”のダイナミックなサウンドスケープで締め括った後のアンコールで原は、「何も考えないでここに立ってるもんでね。そうすると、今日はMCがねー、とか照明さんに言われる。照明さんとの戦いですよ。今日もいい感じに照らしてくれてありがとう」と話していた。バンアパのライヴは、もちろん演奏に触れるのが一番の目的なんだけど、どうしてもMCに期待してしまう部分があるのは否めない。

余談だが、強面で歯に衣着せぬ原は、この日、もうすぐ開演時間ですよというときに、2階で立ち見のお客さんに自ら椅子を用意したりしていて良い人過ぎた。つくづく愛されキャラなのである。バンアパは今後、ASPARAGUSとの対バン・ツアーや6/28のKESEN ROCK TOKYO(@渋谷O-EAST)への出演を控えている。ROCK IN JAPAN FES. 2012への出演は8/3(金)。こちらもぜひお楽しみに。それにしても、新曲の音源化はどうなるのだろう。首を長くして待ちたいところだ。(小池宏和)



set list

01: Falling
02: free fall
03: Game, Mom, Erase, Fuck, Sleep
04: FUCK THEM ALL
05: The Sun
06: led
07: bind
08: Snow Lady
09: (新曲)
10: (新曲)
11: (新曲)
12: light in the city
13: Taipei
14: I love you Wasted Junks & Greens
15: Mercury Lamp
16: photograph
17: Eric.W
18: Can't remember

encore
01: higher
02: Waiting

encore-2
01: beautiful vanity
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