the band apart @ 新木場スタジオコースト(ゲスト:GUSH)

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the band apartの東名阪ツアー「SMOOTH LIKE BUTTER TOUR short spring」。そのファイナル=新木場スタジオコーストのステージに、まずはゲストバンドとしてツアーに帯同してきたフランスの4ピース、GUSHが登場。どっしりとしたアメリカン・ロック調のナンバーあり、疾走感に満ちたソリッドなナンバーあり、と多彩な楽曲を矢継ぎ早に披露してフロアのテンションを上げていく。メンバー全員がマイクを執り、メイン・ボーカルをローテーションしながら放たれる楽曲は、どれもハーモニーの美しさと緻密なバンド・アンサンブルの妙が際立った楽曲ばかり。オルガンを基調にしたゴスペル調のナンバーから、最後は4人の歌声を活かしたアカペラまでも飛び出して、満場のオーディエンスの心をガッチリと掴んでくれた。

the band apart @ 新木場スタジオコースト(ゲスト:GUSH)
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そして19時過ぎ。サウンド・チェックでフロアを沸かせていたバンアパが、そのままステージを下がることなくライブ・スタート! シンプルな8ビートから濁流のごときギターの応酬へと展開する“Moonlight Stepper”でライブの口火を切ると、2曲目“free fall”で早くもハイジャンプを導く。Tシャツ&短パン姿で気持ち良さそうにベースを掻き鳴らす原、ステージ中央でアクティブな動きを見せるギターの川崎を筆頭に、メンバー4人の佇まいはいつも通り統一感がないけれど、カオティックに捩れながらもタイトに引き締まったアンサンブルは、まったくもって隙がない。トライバルなビートとゴリっとしたリフが衝突しては絡み合いながらスリリングなグルーヴを形成していくたびに、フロアから地鳴りのような歓声が上がる。

「GUSHよかったね。すごく楽しかったみたいで、なんか(ライブ後のGUSHは)テンション高かったよ」(荒井)、「今日はウチの母ちゃんが観に来てんだけど(場内喝采)。いやー、GUSHよかったね。俺もあんまライブ観に行かないんだけど、GUSHだったら観に行きたいと思います」(原)――と、言葉少なにツアー・メイトへの賛辞を述べた後は、“Shine on me”へ。地を這うファンキーなグルーヴと荒井の浮遊するボーカルが快感のツボを心地よく刺激していく。その後も“higher”で目映い祝祭空間を築いたり、“Circle and Lines”で川崎のアルペジオと荒井&原のハーモニーが美しく響いたり、“the noise”でミラーボールが輝く快楽的なダンスホールを出現させたりと、1曲ごとに歓喜が押し寄せるアグレッシヴな展開でフロアのボルテージを上げていく彼ら。イントロと同時に大歓声に沸いた“Eric. W”では、一心不乱にジャンプするオーディエンスと共に、骨太なリフとビートがうごめく絶頂空間へと上り詰めてしまった。

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終盤は、張りつめたグルーヴの上でギターの花びらがハラハラと舞う“The Sun”、鋭利なギター・サウンドが青白い閃光を放って疾走する“I love you Wasted Junks & Greens”、ひときわエモーショナルなサウンドスケープが広がるアンセム“photograph”と畳み掛けて本編終了。アンコールでは“Snow lady”演奏後、「もう一度GUSHに会いたくないですか?」(荒井)という呼びかけから“Waiting”プレイ中にGUSHが再びオン・ステージ。バンアパメンバーから楽器をバントンタッチして、奔放なジャム・セッションを奏でていく。一方自らの楽器をGUSHに明け渡したバンアパメンバーはというと、荒井がヴィラスラップを叩いたり、木暮がステージ前方でライムを披露したりと、なんでもありのお祭り騒ぎ。ラストは再び楽器を手にしたバンアパ4人による伸びやかなバンド・サウンドでオーディエンスとGUSHのハンドクラップを誘って大団円。メンバーがステージを去った後も鳴り止まないアンコールに応え、再びステージに舞い戻った原&木暮の音頭による恒例の一本締めを行って、2時間半強に及ぶツーマン・ライブは華やかに幕を閉じた。

目立った演出や飛び道具がない、いつも通りのバンアパの、飾らないアクト。だからこそ、強靭に鍛え上げられた音の力のみで巨大な興奮を生むバンアパのマジカルなエネルギーが透けて見えたアクトでもあった。演奏中に派手なアクションを見せることも、大げさなMCでフロアを煽り立てることもない。しかし、ジャズもファンクもフュージョンも呑み込んで、「音楽を奏でる楽しみ」をギュウギュウに凝縮させたようなバンアパの音楽には、聴き手の衝動を根底から突き動かす圧倒的なヴァイブがある。あくまでもクールでインテリジェントな佇まいを保ちながら、そんなバンド本来の野性味をナチュラルに解き放つバンアパは、つくづく稀有でユニークなバンドだと思う。そんな思いに駆られた充実の一夜だった。(齋藤美穂)
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セットリスト
1. Moonlight Stepper
2. free fall
3. bind
4. FUCK THEM ALL
5. Shine on me
6. higher
7. Circles and Lines
8. the noise
9. Eric. W
10. The Sun
11. I love you Wasted Junks & Greens
12. photograph
アンコール
13. Snow lady
14. Waiting
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