エヴァネッセンス @ Zepp Tokyo

エヴァネッセンス @ Zepp Tokyo - pics by 森リョータpics by 森リョータ
エヴァネッセンス @ Zepp Tokyo
MCでエイミーも言っていたけれど、エヴァネッセンスの実に5年ぶりの来日公演である。そして5年ぶりにも拘らず、そのブランクを全く感じさせない熱気が渦巻いた素晴らしいZEPP公演だった。ファンも熱かった。1階のスタンディングフロアはもちろんのこと、2階も後ろの後ろまでびっちり埋まった正真正銘のフルハウス。エヴァネッセンスの歴代ツアーTシャツを着たファンも数多く見受けられ、本当にロイヤルなファンが彼女達を待ち続けていたことが分かる。

この間には色々なことがあった。いや、エヴァネッセンスはそもそもデビュー以来波乱万丈のキャリアを歩んできたバンドでもある。度重なるメンバー・チェンジ、エイミーの休養と言う名の事実上の活動休止、それに10年近いキャリアでオリジナル・アルバムが僅か3枚であるという寡作っぷりも際だっている。しかし、それでもエヴァネッセンスにはファンを引き付けて止まない力があるし、最新アルバムにして初のセルフタイトル作となった『エヴァネッセンス』はもちろん全米初登場1位を記録している。そして、彼女達のそんな揺るがぬ求心力の源が明らかにされたのが今回の来日公演だったと言っていい。

オープニングは『エヴァネッセンス』からの先行シングルでもあった“What You Whant”、彼女達のカムバックを象徴するヘヴィ・ロック・ナンバーが、いきなりトップギアで激しくドリフトしながらスタートする。ステージ上のエイミーは黒と紫を基調にしたドレスを纏い、心持ちシャープになっているように見える。と言うか、ステージ狭しと動きまわりながらオーディエンスを煽っていく足取りが以前よりもきびきびと軽やかに見える。迷いがないとも言い換えられるかもしれない。続く“Going Under”は殆どイントロどん状態の瞬間着火で爆発した歓声も凄かったし、重低爆音なギターのリフが途切れるたびに聞こえてくるオーディエンスの一糸乱れぬ合唱も驚かされた。新旧アンセムを途切れなく打ち込む最高のスターターだ。

13日までまだツアーが残っているので詳しいセットリストの記載は控えるけれども、主体となっているのは最新作『エヴァネッセンス』からのナンバーだった。それだけ現在に自信がある証だろうし、実際に彼女達のパフォーマンスを見て感じたのは『エヴァネッセンス』のナンバーに過去の彼女達のエッセンスがぎゅっと凝縮されているということだ。たとえばファースト『フォールン』の胆だったゴシック・メタルをモダナイズした“The Other Side”といい、たとえばセカンド『ジ・オープン・ドア』の胆だったヘヴィ・ロックをよりハードに激重に進化させた“Made Of Stone”といい、この日全編に散りばめられた『エヴァネッセンス』からのナンバーは、彼女たちの過去2作品のテイストを継承・アップデートしたものになっていた。そういう意味で、今回の来日は凄くエッセンシャルなエヴァネッセンス「らしさ」を感じられたライヴだったし、それが『エヴァネッセンス』が「原点回帰作」と呼ばれる所以でもあるのだろう。「らしさ」を取り戻した自信が、5年ぶりのエヴァネッセンスのショウにその長きにわたる不在を埋めて余りある濃さと熱を与えていた。

中盤はこれまたエヴァネッセンスらしいピアノの弾き語りから始まるセクションで、グランドピアノがステージ中央に運び込まれてくる。ゴス、メタル、ヘヴィ・ロック、ミクスチャーといったエヴァネッセンスを語るキーワードおいてもうひとつ忘れてはならない要素がクラシックなわけだが、エイミーの高く透き通った歌声とピアノの流麗なマリアージュと、ゴリゴリのバンド・サウンドが共存するこのピアノ・セクションは、そんなクラシックも含むエヴァネッセンスの究極のミクスチャー・セクションと呼べるかもしれない。極めて欧州的な美と極めてアメリカ的な力が真正面からぶつかり合う彼女達の美学を象徴する流れだった。

そして後半は再び爆・重・激が3拍子揃ったヘヴィネスの饗宴に雪崩込んでいく。本編の最終コーナーでは『フォールン』からの鉄板中の鉄板の大ヒットチューンが連打され、中でも“Bring Me To Life”は間違いなくこの日の最大のクライマックスで、何が凄いってかの有名なポール・マッコイ(12ストーンズ)のヴォーカル部分及び合いの手をオーディエンスがほぼ完ぺきに担当してしまってたことだ。ほんと何度でも書くけれど、エヴァネッセンスのファンは凄い!!

本編ラストが“Bring Me To Life”で、言わば「表エヴァネッセンス」の代表的ナンバーで締めくくられたのに対し、アンコール・ラストは“My Immortal”、言わば「裏エヴァネッセンス」の名曲で幕を下ろしたのも印象的だった。しめやかなピアノ・バラッドが灼熱のヘヴィネスの最後に当然のように待っている、この落差が美しかったし、何よりエヴァネッセンスらしいと感じた。(粉川しの)


セットリスト
01. What You Want
02. Going Under
03. The Other Side
04. Weight Of The World
05. The Change
06. Made Of Stone
07. Lost In Paradise
08. My Heart Is Broken
09. Lithium
10. Swimming Home
11. Sick
12. Oceans
13. Call Me When You're Sober
14. Imaginary
15. Bring Me To Life
-encore-
16. Never Go Back
17. Your Star
18. My Immortal
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする