オープニングSEのビートルズ“ブラックバード”と共に、にこやかにステージに登場するガリレオの4人に対して、瑞々しいまでの黄色い歓声が浴びせかけられる。弾けるように響くガリレオのバンド・サウンド。ややボトムを強く描き出すPAバランスに、ぐいぐいと動き回る佐孝仁司(B)のパンチの効いたベース・ラインが映えている。そして昂った歓声とダイナミックなバンド・サウンドをかいくぐって届けられる、尾崎兄こと雄貴(Vo./G.)の芯の強い歌。丁寧に歌い込まれた印象の作品群で聴く声とはまた違う、ライブ映えする生々しいエモーションに乗せられた声だ。
岩井郁人(G.)がフロアに向かってハンド・クラップを求め、オーディエンスが波打ちながらそれに応えつつ2曲目“ハマナスの花”へと傾れ込んでゆく。ここからは2月にリリースされたメジャー・デビュー・ミニ・アルバムからの楽曲が続けざまに放たれていった。“胸に手をあてて”の、尾崎兄による挑みかかるような歌が熱を帯びる。文化系草食なソング・ライティングと、メンバーの佇まいからは想像も及ばないような体育会系肉食な演奏とが不思議と共存するステージングだ。そして尾崎兄が曲間に言葉を発する。「『アメラブの夏休み』です。はっちゃけましょう! 最近、悶々としてたんですけど、すごい楽しいです。ライブなのにリフレッシュしてます!」。
ミドル・テンポでエモーショナルな“Answer”にしても激しくパートの音が交錯する“扇風機”にしても、常に歌の物語が演奏の真ん中にある、というのがガリレオのパフォーマンスの特徴だ。歌の情感とともにバンドの熱量もパラレルで推移する。この点においては決してブレない。既に確立されたスタイルになっているのだ。若いオーディエンスたちの多くの共感を呼んでいるガリレオの、最大の武器はそれかもしれない。彼らのレパートリーの中には幾つかのインスト・ナンバーがあるし、たぶんそれをステージで披露する力量もある。きっと大いに盛り上がるだろう。でも、今回のワンマンでそれらは披露されなかった。音楽的であることを踏まえた上で、歌に、言葉に、物語に重きを置いていることが分かる。
「ワンマンの前日って僕ら夜更かししちゃうんですけど。良くないんですけど。相撲を観ちゃって盛り上がっちゃって。おおっ、て大声を出して、危うく声を潰しかけました。相撲、おもしろいんで、みんなで盛り上げましょう!」。尾崎兄がそんなことを言っている。うーむ、大相撲中継中止を受けての深夜ダイジェスト放送の弊害が意外なところに表れているな。あと、兄は「お腹が冷えるとユルくなっちゃうんで、今カイロを貼っている」とも告げてオーディエンスを驚かせていた。いや、そもそもこの時期に長袖のパーカーを着てステージに立っている時点でおかしいのだが。体調管理がルーズなんだかシビアなんだか、よく分からない男である。
さて、このあとには、未発表の新曲も2曲披露された。若き魂に投げ掛けるような暖かいメッセージ・ソング“18”と、もつれながら生活する男女の想いの摩擦がエモーショナルに、豊かな詩情で描き出された“SIREN”がそれだ。どちらも素晴らしいナンバーだった。やはりガリレオのロックのど真ん中には、強い歌の物語がある。彼らは、物語が広大な音楽の世界の扉であり、また音楽の感情表現を押し広げるものだということを知っている。そして何よりも歌は、楽器を持たない一人きりの人にも確実に寄り添うことが出来る「音楽」なのだ。
終盤、『閃光ライオット』のグランプリ受賞曲である“ハローグッバイ”から満を持しての今夜の主役“夏空”と必殺曲が畳み掛けられ、フロアにはオーディエンスの無数の掌が舞い踊る。“夏空”は今夏、各地のロック・フェスを転戦するガリレオにとっても、新しいアンセムとなるだろう。ラストはバンド最年少にして安定したビートを供給し続けていた尾崎弟、和樹のミニマルな祭囃子ドラムが大活躍する“ねるら村の感謝祭”で、賑々しくステージ本編のクライマックスを迎えたのだった。
アンコールの催促に、フロアからは“ハローグッバイ”の歌メロがどこからともなく自然発生する。やはりガリレオ・ファンにとって、“ハローグッバイ”はそれだけ特別な一曲なのだろう。尾崎兄は「バンドを組み初めのときにいろいろ妄想を膨らませてて、お客さんが僕たちのオリジナル曲を歌ってくれるようになるといいな、って話してたんです。ね? 仁司。本当にどうもありがとう」と笑顔で応える。生み出された強い歌は、ファンとの強い絆そのものだ。『夏空』以降、新たにレコーディングを進めていたというガリレオの次なる作品にも、期待が膨らむ。
なお今回のステージでは、彼らの次なるワンマン公演決定の報も伝えられていた。10月14日、恵比寿リキッドルーム! 軽やかにステップ・アップしてゆくガリレオである。彼らのオフィシャルHPにて、引き続き情報をチェックして欲しい。(小池宏和)
セットリスト
1.Swallow
2.ハマナスの花
3.胸に手をあてて
4.Answer
5.扇風機
6.18
7.花の雨
8.SIREN
9.ハローグッバイ
10.夏空
11.Monday7s
12.ねるら村の感謝祭
EN.管制塔