DOPING PANDA @ 横浜BLITZ

「えー、『decadance』という問題作にして最高傑作ができました! 最高のライブを向こう100年見せ続ける、その最初のツアーです!」というFurukawaのMCに、湧き上がる大歓声! 先月リリースされたばかりのアルバム『decadance』を引っ提げて、夏フェスの時期を挟んで11月末まで全43公演にわたって日本中をサーキットする『DOPING PANDA JAPAN TOUR 2009』の11本目となる雨の横浜BLITZでは、徹頭徹尾フロア狭しと踊り倒すオーディエンスから、さらに雨雲が発生する勢いの汗と熱気と歓喜があふれ出す、充実のアクトだった。

まだツアー真っ最中ということもありセットリストの詳細は伏せておくが、当然ながら『decadance』の全曲をちりばめつつ、クライマックスへ向けてひたすらアガり続ける“MUGENDAI DANCE TIME”がありつつ……という、今のドーパンの持てるすべてを惜しみなく凝縮したセットであることは間違いない。「先は長いですよ! 納得するまで今日は帰りませんからね! 今日で11ヵ所目ですけど、MAX調子いいです! もとい、俺とHayatoは調子いいです! タロティーは……ほどほどです! タロティーはスロースターターなので(笑)」と、高揚するフロアを眺めつつ、ロック・スターことFurukawaは自分のギアとハードルとテンションをぐりぐり上げていく。

たとえば、ストレートなパワー・コードにどこかニューウェーヴのような色気が漂う“lost & found”や、シンセ・ベースのシャッフル&ブルースをとびきりポップに響かせる“the idiot”に垣間見える、バンドの「ナマ」の躍動感。たとえばエレクトロ・サウンドもギターの残響音も同じ肉体の一部として高らかに鳴らす“the edge of outside”の、脳細胞がクリアになっていくような快感。そして、たとえばシングル曲“beautiful survivor”の、飛び道具的なシンセの音色とアグレッシブなビートとギターと歌がデッド・ヒートを繰り広げながら、総天然色のサウンドスケープを描き出していくスリル……およそ3ピースのロック・バンドとして描き出せる「音楽の面白さ」を片っ端から大放出していくようなアクトだ。「ダンス・ビートの追求」や「ロックの強度の追求」よりも、『decadance』に満ちているのはまさにその「面白さ」だったし、3人のプレイはまさにその「面白さ」こそが2009年の「今」のロックの希望である、とシーンにがっつり提示するようなカタルシスを孕んでいる。

「『やつら全員30になってまとまってんじゃないの?』とか思ったら大間違いで。忘れてたものを思い出したような気分で……ケダモノのような感じです。触る者みな傷つけますよ! 20代の半ばの、『野心をぶつける』というかね、そういうのがまた戻ってきた気がします。世の中にはびこる草食の真逆を行く感じで! 我々と一緒に、本当の、本当のムチャをしましょう!」とFurukawaのMCがさらにヒート・アップしたところで、怒濤の“MUGENDAI DANCE TIME”突入! フロアはもう踊るわ跳ぶわ歌うわ回るわの阿鼻叫喚のダンス天国! 「ヨコハメイニア! 聞こえるか横浜! 俺はまだ歌えるぜ! お前らまだ歌えんのか!」と煽るFurukawaとともに、BLITZ一丸となって絶頂へ昇り詰めて……本編終了。

アンコールでは、タロティーがカメラを取り出してオーディエンスと記念撮影。「タロティーの小汚いブログに、君たちの小汚くて小賢しくて最高の笑顔を!(笑)」というFurukawaの愛情逆噴射な言葉に、フロアに咲き乱れるとびっきりの笑顔! ダブルアンコールで再登場したFurukawaが、最後に語った「アルバム作ったりとか、ツアー回ったりとか、ルーティーンのようにやってますけども……ぶっ壊していきたいと思います。ぶっ壊した先に何かがあると思うんで」という言葉が印象的だった。「……ドラマーは先に『ぶっ壊れて』ますけど(笑)」と、すっかり全力出し尽くした風で床に座り込んだHayatoに話を振ってみせることも、スターは忘れない。7月23日にはFurukawaいわく「お師匠さん」ことSYUTA-LOW“TGMX”TAGAMIとリキッドルーム恵比寿5周年記念対バン・ライブ開催! ROCK IN JAPAN FESTIVALの2日目LAKE STAGEトリ決定! そして9月からはツアー後半戦!と、ドーパンの夏はまだまだ止まらない。(高橋智樹)
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