現代日本が誇るエンターテイナーと、グラミー受賞のトッププロデューサーが夢の共演を繰り広げる「LIVE in JAPAN 2018 星野源 × マーク・ロンソン」。早々にチケットがソールドアウトした、一夜限りのダブル・ヘッドライナー・ショウの模様をレポートしたい。
先行してステージに立つのは、ロンドン生まれニューヨーク育ちのマーク・ロンソン。エイミー・ワインハウスのアルバム『バック・トゥ・ブラック』や自身の“Uptown Funk feat. Bruno Mars”などのプロダクションでグラミー受賞歴を持つ彼だが、ヒップホップDJとして鳴らした経緯がある。まずは、共にアルバムを製作中とされるマイリー・サイラスの“Nothing Breaks Like a Heart”で強くバウンシーなビートを持ち込んでいった。ディプロとのユニットであるシルク・シティとデュア・リパの“Electricity”から、ソロキャリア初期のオールドスクールなヒップホップ“Ooh Wee”と繋ぎ、ブレイクを挟み込んでは鋭い目線と昂ぶった口調で煽り立てる。
その姿勢は、何が何でも盛り上げてやるぞ、というプロフェッショナルな意地を感じさせる。グラミー受賞アーティストの余裕だなんて、とんでもない。そんなイメージを抱くことすら、彼に対して失礼だ。アルバム『アップタウン・スペシャル』のターゲットマークが背景に浮かぶと、変幻自在のダンスタイムが展開されていった。さらに、キング・オブ・ポップことマイケル・ジャクソンのリミックスメドレーで、誰一人逃すかとばかりに追い込みをかける。“Don't Stop 'Til You Get Enough”〜“Wanna Be Startin' Somethin' ”〜“Smooth Criminal”〜“Billie Jean”という鉄板の流れだ。
その直後、もう一人のレジェンドにして他界した盟友=エイミー・ワインハウスが歌う“Valerie”(ザ・ズートンズのカバー)を放り込んでくるのだから泣ける。お待ちかねの“Uptown Funk”では悲鳴ともつかない嬌声が上がり、フロア一面が激しく波打っていた。ダメ押しは「ジョン・レノンとヨーコ・オノのクリスマスソングをプレゼントするよ」と告げてからの、厳かなベースミュージックによる最新カバー“(Happy Xmas) War Is Over (feat. Sean Ono Lennon)”だ。限られた時間に、底なしの音楽愛と情熱でオーディエンスを感動へと導くDJショウだった。ちなみに、マーク・ロンソンとショーン・レノンは、ローティーンの頃から親友同士である。
さて転換後、ホーン/ストリングスセクションを含む大所帯バンドが待ち構えるステージに、ピースサインを掲げ颯爽と登場する星野源。ニューアルバム『POP VIRUS』発売直前、まずはマリンバに向き合ってマレットを振るい、華々しく奏でるのはインストの“ファイアークラッカー”だ。YMOの、というよりも、星野源にとってはエキゾチカのルーツを辿るマーティン・デニーからの孫カバーといったところか。こちらも、音楽遺産への弛まぬ愛をぶつけてくる。
“地獄でなぜ悪い”のあとには、「嬉しい。ライブが久しぶりで、去年のツアー以来なんで。あと、マーク、カッコ良かったですね!」と告げる。後に語られていたところによれば、マーク・ロンソンは体調を崩しての来日となってしまったそうだが、それであの熱量のライブか、と驚かされた。暖かなサウンドがファルセットボイスのメロディを運ぶ“桜の森”に続いては、官能と切ないエモーションが織り成す星野ワールドのソウルが全開になる。“Night Troop”と“Snow Men”の間にライブ初披露された“肌”はクラブジャズ風に料理され、甘い夜の時間へと突き進んでいった。
「みんなバラバラに動いてる。それがいいんだって。自分の踊りを踊ってください。じゃあ、バラバラに踊ったあとは、みんなで同じダンスを踊ってみるというのはどうでしょうか?」と呼びかけて投下されるのは“恋”だ。曲中に「すげー! みんな踊ってる!!」と声を漏らす星野源は、2コーラス目後の間奏で自身もキレッキレの振り付けを繰り広げて沸かせる。続けざまに“SUN”を放つと、「マジで、リハしてるときはここ、極寒だったんですよ。みんなの熱気で暑いです」と笑いながら、自分が好きな音楽をやっていいものかどうか創作活動の方針に思い悩んでいたとき、コンビニで聴いた“Uptown Funk”に勇気を貰ったことを語っていた。
バンドの高速回転グルーヴを乗りこなし、ビートミュージックの夜を掻い潜り、フォーキーな歌心を伝えて爆発的な歓喜へと導く“アイデア”は、バンドサウンドの精度の高さに度肝を抜かれる名演になった。来るドームツアーは期待してもし過ぎることのない、凄まじいものになるはずだと確信させられる。本編ラストは《胸の窓光る先に/手を振りながら/離れゆく場所で/笑い合うさま》と歌われる“Friend Ship”。国/文化の枠組みを越えたライブに相応しいナンバーだ。さらに、予告どおりのアンコールでは月曜日のラストダンス“Week End”を決めて、この最先端ポップミュージックの宴は幕を降ろすのだった。(小池宏和)
●セットリスト
マーク・ロンソン
1. Nothing Breaks Like a Heart
2. Electricity
3. Ooh Wee
4. Daffodils
5. Feel Right
6. MJ Medley
7. Valerie
8. Uptown Funk
9. (Happy Xmas) War Is Over
星野源
1. ファイアークラッカー(Inst)
2. 地獄でなぜ悪い
3. 桜の森
4. Night Troop
5. 肌
6. Snow Men
7. 恋
8. SUN
9. アイデア
10. Friend Ship
(アンコール)
EN1. Week End
終演後ブログ