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    【来日レポ】ライド @ Tokyo Dome City Hall公演

    【来日レポ】ライド @ Tokyo Dome City Hall公演

    昨年のサマーソニックのホステス・クラブ・オールナイターでの出演以来となるライド。2015年に再結成してから初のリリースとなるアルバム『ウェザー・ダイアリーズ』を昨年リリースし、今回は新作EP『Tomorrow’s Shore』を引っ提げての来日だ。

    2015年のフジロックフェスティバルでの出演は完全にファースト、セカンドを中心にしたセットだったが、ここのところは『ウェザー・ダイアリーズ』がほぼセットの半分近くを占める構成になっていて、今回も『Tomorrow’s Shore』を含めて新作群がほぼ半分、往年の楽曲が半分という構成になっており、端的にライドの魅力を堪能できる内容になっていた。

    新作群が半分となるとかなり攻撃的な構成であるようにも思えるが、しかし、今回の新作についてはバンド自体がどこまでも前向きにライドという存在を捉え直した作品になっていて、1990年当初のライドとライドの世界観にどこまでも親和性の高い内容として打ち出してきているので、新作群をいくら放り込んできてもそれは構わない話なのだ。

    身も蓋もない話になるかもしれないが、ところどころで90年から92年頃までのキメとなる曲を聴ければそれですべてに一本筋が通っていくし、その限りにおいては新曲群もどこまでも楽しめるのだ。再結成とその後のライドの新作群は、あの頃あの音に身を浸していたオーディエンスにとっても、そしてあえて再結成に踏み切ったバンドにとっても、どこまでも前向きにあの音を回復する作業なのだ。

    オープナーを飾ったのは『ウェザー・ダイアリーズ』からの“Lannoy Point”で、これはどこまでもコンテンポラリーなリズム感とアレンジを押し出しつつも、ライドのどこまでも聴きやすいポップなノイジーさとエキセントリシズムを打ち出す、まさにライドの現在といったもの。

    続く“Charm Assault”も『ウェザー・ダイアリーズ』からの曲で、こちらはよりエッジーでパンキッシュなナンバーとなっている。実はこのオーダーはアルバムのままのもので、まずはバンドの現在を打ち出し、それに続いてバンドのルーツを探訪するという構成になっている。その後、今回のライブではファースト『ノーホエア』からのパワー・サイケ・ポップの“Seagull”という、バンドの核心ともなるサウンドが襲いかかってくるわけで、とても素晴らしい展開になっていたと思う。

    その後も、新作群の合間に90年代初期の楽曲を挟んでくるという構成でライブは展開し続け、それは純粋にどこまでも気持ちのいいパフォーマンスとなった。

    たとえば、新作EPからの“Pulsar”は、ライドの空気感、ギター・サウンド、メロディライン、ベースライン、ドラムパターン、そして残響音とその魅力の要素のすべてを解体、整理、再構築したという、どこまでもクリアーでいてドリーミーなところが画期的な試みになっているし、“Catch You Dreaming”にいたってはライドの世界観を壊さずにシンセ・ポップとグルーヴの獲得に成功しつつも妙にノスタルジックな響きも打ち出した絶妙な作品にもなっている。

    しかし、その後に続くセカンドEPからの“Like a Daydream”やファーストからの“Dreams Burn Down”はとてつもない破壊力でもって鳴り響くのだ。

    いろんな意味でライドは特異なバンドだが、特に際立っているのは、1990年までのイギリスのインディー・ロックの試みがすべて体現されていたということだ。しかも、ライドを通過するとすべてがすぐれたポップとして鳴ってしまうところがライドのすごいところだった。

    さらに、それがすべて自然発生的で天然なもので、作為的なものがなにもなかったところが、このバンドのとてつもない輝きともなっていたのだ。

    その自然体を維持していくのは並大抵のことではできないし、事実、ブリット・ポップの台頭とともにバンドは次第に空中分解していくことになった。ファーストEPから28年、解散から22年経って、その自然体を新作群とともにこのバンドが今あらためて鳴らしているのはある意味で驚異的なことだと思った。(高見展)



    〈SETLIST〉

    Lannoy Point
    Charm Assault
    Seagull
    Weather Diaries
    Taste
    Pulsar
    Catch You Dreaming
    Like a Daydream
    Dreams Burn Down
    Cali
    Time of Her Time
    Lateral Alice
    All I Want
    OX4
    Vapour Trail
    Drive Blind
    (Encore)
    Rocket Silver Symphony
    Leave Them All Behind
    Polar Bear
    Chelsea Girl
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