オウテカ @ 恵比寿リキッドルーム
2008.04.28
鋼鉄の1時間、とでも呼びたくなるような空間だった。次の日が祝日ということもあって、オウテカが登場する午前1時でもリキッドルームのフロアは満員のオーディエンスでごった返している。ロブ・ホールと808ステイトのグラハム・マッシーを引きつれ約3年ぶりの来日を果たしたこの2人組は、スタートからまさに余裕綽々といった具合で、ひしめき合ったオーディエンスを硬質なのに無尽蔵に広がっていくようなサウンドスケープに引きずり込んでいく。前回の来日公演同様、今回も完全消灯下でライブが行われたのだが、ステージはもちろんフロアを照らすレーザーライトもなく、視界がほぼ遮断された中でメタリックなビートが体をビシビシ貫通していくのが最高に気持ちいい。それはよくあるハウスやテクノのステージとはかけ離れたレベルでの興奮作用を促していて、「アガっていく」というよりも地底の奥へ奥へうずもれていくような、そんなトリップ感なのである。金属音と低いベース音がうねるように絡み合い、まるで錬金術のようになめらかに形を変えながらフロア全体をがっちりと包み込んでいく、その魔法のような音像に我を忘れてのめりこんでしまった。1時間があっという間に感じられた、完全無欠のプレイだった。一切の視覚効果に頼らず、音だけで真っ向勝負を挑んだエレクトロ・ミュージックの本家は、もう迫力が違うとしか言いようがない。(林敦子)