とにかく惜しむらくは天気である。ジャック・ジョンソンたっての希望である「海の見える場所でのコンサート」ということで、赤レンガ倉庫の横に特設会場が作られ実現した今回の来日公演。なのに2日目の今日は朝から雨が降り、昼には止んだものの気温は低く、海から吹きつける風は冷たく、ライヴ自体の素晴らしさを思うと残念な空模様だった。2日間の本公演ではジャック・ジョンソンの前にテッド・レノン(12日はメイソン・ジェニングス)、カリカヒ、マット・コスタのアクトが披露され、ステージ後方にはビールやフードも売っているという、さながら「ジャック・ジョンソン・フェス」のごとき空間。他のアーティストのライヴにはあり得ない解放感で満ち満ちていたのが印象的だった。
肝心のジャックのライヴはといえば、胸がいっぱいになるような素晴らしいもの。アコギをベースにウクレレ、エレキなど使い分けながら、まるで自分の鼓動に合わせるかのようにゆっくりと言葉を紡いでいくジャック。そこにピアニカ、アコーディオン、鉄琴などノスタルジックで有機的な音色が重なり、ポップにもサイケデリックにもブルージーにも色を変えていく。それらがひとつのサウンドになってステージから放たれたとき、こんなにも深く響いてくるものなのかと驚いた。シンプル極まりないサウンドなのにこれだけ味わい深かったのは、やはりサーファー、映像作家などマルチな方面で突出した才能を誇るジャック・ジョンソンという人のサウンド・クリエイションに全くブレがないからなのだろう。MCらしいMCがほとんどないままあっという間に終わった約2時間のステージだったが、彼の半端ないカリスマなオーラ(本人はいたって普通なのだけど、あの場にいた人たちは感じ取ったに違いない)と、セラピーかと思うくらい心に沁みてくるハンドメイドな音楽の温もりは、本当に忘れがたいものになったと思う。(林敦子)
ジャック・ジョンソン @ 横浜赤レンガパーク野外特設会場
2008.04.13