【インタビュー】ミステリアスな存在感よりも「自分」という実像を──Vuatが2枚目のアルバム『DTRM』で手を伸ばす在り方とは - 【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2026】【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2026】

【インタビュー】ミステリアスな存在感よりも「自分」という実像を──Vuatが2枚目のアルバム『DTRM』で手を伸ばす在り方とは

僕がVuatを取材するのは2度目。オーディション「RO JACK」で優勝し、出演権を掴んだROCK IN JAPAN FESTIVAL 2026でのライブも観たうえで臨んだのだけれど、そのうえで「あ、そうなんだ」と意外にも思えたことがある。それは彼がもっと自分を出していきたい、知ってほしいと感じていることだ。角度を変えればもっと身近な存在に感じてほしい、ということでもあるかもしれない。これまでライブをほとんどやらず、インターネットやSNSに作品をアップし、そこでリスナーと出会ってきた背景からすればもっと捉えどころのない不確定的なアーティスト像も浮かぶが、決してそういうことではないようだ。そういった彼の思いはなるほど、先日リリースされたばかりの2ndアルバム『DTRM』を深く聴き込んでいくことでも伝わってくる気がする。特に顕著なのは最終曲“Make, make, make songs”に記される、現状の満ち足りなさを自覚したうえで吐露する願い。そこには謎多きラジカルな才能というより、等身大の音楽家の姿があるのだ。また、幅の広い作風ながら、音楽的に何が好きでどこを気持ちいいと感じるのかについても至る所に込められている。本格的なライブ活動も間もなくスタートさせるVuatは、何を目指しどこへ向かうのか。置かれた現在地と抱く心情をありのままに語ってくれた。インタビュー=風間大洋

(Vuatというアーティストが)今はまだ、謎な部分や隠れちゃってる部分が多いイメージを持ってて

──まずはROCK IN JAPANのステージ、どうでした?もう本当に、出れたこともメインステージで歌えたことも、素晴らしい体験ができたなと。RO JACKのオーディションのおかげでこういう、まだ見つけられていないこれからのアーティストがチャンスを掴めたということにも感謝してます。──オーディションの時点でまだライブ経験自体が2本目だったんですよね? なかなか珍しいパターンではあったと思うんですが。確かに。でも、ここはもう乗り越えて当たり前くらいのマインドで、リハも毎日してたので。オーディションだけども、今できるライブパフォーマンスのすべてを出したい、みたいな感覚でした。──腕試しというよりも、自分のキャリアを切り拓くうえで突破するべき試練の位置づけだったんですね。そのためにどんなことに取り組んだんですか?見せ方の部分も練習してたんですけど、エレキギターを持って歌うことも初めてだったので、そこがまず新しい感覚というか。ザ・バンド!みたいな感じで楽しくて、弾きながら歌うのに合う歌い方を探したり。──バンドの真ん中でギターをジャーンとやる、ロックミュージシャン感みたいなものが新鮮な体験だった?この活動をする前は、スタジオに入ってアンプからのエレキの音を聴く機会すらなかったので。初めて自分が鳴らして返ってくる音っていうのが、すごく気持ちよかったのはあります。曲を作る時はどうしてもPCで作っちゃってたんで、その中のエレキの音って擬似的なものじゃないですか。そこは全然違いましたし、生の感動みたいなものはありました。──その感動の規模の大きい版が本番だったんじゃないかなと。もう本当に素晴らしい経験ができた半面、練習してきたことに対して全部を出し切れた感じではなかったので、いろいろと反省もしながら、次のワンマンではそれこそ全部を出せるように。今もまた練習をしてます。──でもすごく堂々としていたし、観ていて不安を覚えたり保護者目線になる瞬間はなかったです。本当ですか(笑)。ハンドマイクで歌ったり踊ったり、「見せる」ということ自体が自分は苦手なぶん練習してたからこそ、今の自分がどれくらいできるかを認識した状態でライブに挑めて、多少の自信に繋がったというか。一か八か感ではなかったというか。
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──もともとシンガーでありコンポーザーであるところに加え、パフォーマーとしての活動が始まったことは、自分が思い描くVuatというアーティスト像に何か変化をもたらしました?Vuatとはどういうものなのかっていうのは、どんどん変わり続けてはいるんですけど。今はまだ謎な部分や隠れちゃってる部分が多いイメージを持ってて──。──見え方として?そうです。どういう人なのか?というのをもっとうまく見せながら固めていければいいなと思うんですけど。──意図的にミステリアスであろうとするより、ある程度はキャラクターのイメージを持ってもらうほうが理想?自分としてはそうかもしれないです。
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最初はチャレンジ的に、普段は作ろうとしないジャンルに手を出してみた期間もあったんですけど、辿り着いたのは今の自分をそのまんま書くこと

──そうなると今回のアルバムが果たす役割も大きそうですが、制作上でもよりVuatの輪郭をはっきりさせたい意識はありました?もともとは意識してなかったんですけど。チームと話し合う中で今回は「DTMで作るロック」という、新しいジャンルを作ろうじゃないですけど、もともと自分が持っている中でのロックな編曲をすることが多くて。これまでは無意識に作っていたものが、ちゃんと意図的になったというのはありました。──まだ見つかってない存在だと自認してるという話でしたが、“怪獣とヒーロー”や“ケロイド”の存在によって、1stアルバム制作時点よりは自分のカラーを世の中がわかっている状態の作業だったと思うんですね。その辺についても考えました?今はこれを作る、みたいな意識のほうが強かったかもしれないですね。前回出したものを追うより⋯⋯なんていうんですかね? 今作るものに自然とVuat色みたいなものが混ざっていたりするほうがいいかなと思ってて。1stアルバムのことはあまり引きずって考えずにやりました。──DTMで作るロックというほかには、精神的な部分も含め何かテーマみたいなものはありましたか。最初はすごくチャレンジ的に、普段は作ろうとしないジャンルに手を出してみた期間もあったんですけど、辿り着いたのは今の自分をそのまんま書くことで。今の状況でしか書けないことを書く、みたいなことはアルバムの中に共通点としてあったりします。──ああ、それこそ“Make, make, make songs”とか。まさにそうですね。──“DAW Rock”から“Make, make, make songs”という最後の2曲の流れがすごくいいんですよね。どちらも未来や理想の話をしてるけど、大きなことを言ってる“DAW Rock”に対して、奥底にある密やかな願いを歌う“Make, make, make songs”があって。そのどっちも自分だよ、みたいな。うん。その2曲ともアルバム制作の最後のほうに作った曲で、そのぶん今思っていることをそのまますべて出せたイメージはありました。それこそ最初の段階からああいう曲を作ろうとしても、出てきたかどうかわからないというか。たくさん作って、いい曲もボツも出たうえでの2曲というのはあります。──最後の仕上げだったからこそ、全体的なテーマ性を表すものにもなったんでしょうね。そう思います。“Make, make, make songs”に関してはもう、本当にそのまんまというか(笑)、ここまでストレートに書いたことはないんじゃないか?っていう。自分の内側を見られちゃうような感じで、どうしても恥ずかしさが出ちゃうなとは思ってたんですけど、逆にこれまでストレートに書いてこなかったからこそ、書いてみたほうがいいんじゃないかって。──どこまで自分を出すかの葛藤とか逡巡って表現者にはつきものですけど、それを乗り越えることができたからこその名曲っていろんなアーティストにあると思ってて。それがVuatさんにとってはこの曲なのかもしれないですね。しかも、それを感傷的な曲調じゃなくいちばん軽快なロックサウンドで歌うというのがまたいい。嬉しいです、ありがとうございます。──ロッキンのライブでも最後、特に説明なくさらっとやってたじゃないですか。そのぐらい、何も言わずにパッと聴かせても、どういう曲かをみんながわかるような曲だと思うので⋯⋯自分のことをストレートに書いてはいるんですけど、それで少しでも(リスナーが)自身に置き換えて聴いてくれたりしてくれたら嬉しいなとも思います。
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