【インタビュー】Vaundyの一球入魂のロックンロール! 夏の高校野球テーマソング“かげろう”、その熱い意図を語る

【インタビュー】Vaundyの一球入魂のロックンロール! 夏の高校野球テーマソング“かげろう”、その熱い意図を語る

“かげろう”はVaundy初の直球のロックンロールだ。まさか今Vaundyがいきなりここまで裸のロックンロールをやるとは予想してもいなかったし、やるとしてももっとポップでモダンに仕上げてくるかと思いきや、ミッシェル・ガン・エレファント丸出しの荒くれアレンジで、しかも楽器隊はせーので一発録り。聴いた瞬間は思わず笑うしかなかったが、今時誰もやってないことを見事にやってのけているという意味ではなるほどVaundyそのものだし、そう思って真正面から聴いたらめちゃくちゃかっこいい曲である。ほんとにこの男は面白いし、痛快極まりない。なぜ今、しかも「熱闘甲子園」テーマソングに荒くれロックンロールなのか。そしてVaundyのこれまでの“CHAINSAW BLOOD”や“怪獣の花唄”などの「ロックな曲」と“かげろう”の「ロックンロール」は何が根本的に違うのか。そのあたりの話を今回も明快に解き明かしてくれた。題して「Vaundy、ロックンロールを語る」の回、じっくり読み込んでくれ!インタビュー=山崎洋一郎 撮影=太田好治

「頑張れ」って言う曲じゃないほうがむしろいい。頑張らなくていいけど、かっこよくいてくれ、というメッセージのほうが強いなって

──新曲“かげろう”はミッシェル・ガン・エレファントみたいな激走するロックンロールで。ミッシェルが好きだからこうなっちゃった(笑)。みんなあんまり知らないんだけど、僕は元々ロックなんですよね。高校時代とか、最初に曲を作った頃はほぼ全部ロックだったので、俺としてはむしろこっちのほうが正しい戦場で。この曲から増えていくと思う。来年のために作った曲もこういう感じなので。──しかも、この曲はロックだけど、もっと言えばロックンロールじゃん。めちゃくちゃインパクトあるよ。今までの「熱闘甲子園」の曲を聴いたんですけど、逆にこういう曲がなかったんですよね。最初に思いつくのに、なぜやらないんだろうって。──そうなんだよ! 少年たちの心と体を直撃するのはロックじゃん。でも、ロックな曲ってあんまりないよね。そうなんですよねえ。たぶんこういうテーマ曲をつけて盛り上げていこうという取り組みが始まった時、ロックじゃなくてハイファイな音楽が流行ってたんだと思ってて。俺がガキだった2000年頃、確かにロックンロールってなかったなと。それこそ俺もミッシェルを聴いたのはだいぶあとになってからだし。ロックンロールというか、ああいう泥くさいバンドが俺は好きだったから、いつかやりたいな、俺がやったらどうなるかなって考えてたのが出てきました。とにかくみんなが参加できる曲にしたいというイメージはありましたね。──大人が高校野球の物語を描くのではなくて、高校球児と一体化するというアプローチで楽曲が作られるのはほんとに珍しいと思うよ。目線を子どもたちが見てるものにしたほうがいいと思ってて。僕は、子ども時代に人と何かしてもあんまりうまくできなかったので、ワンマンプレイが多かったんですよ。野球、サッカー、水泳とスポーツはいろいろやってて、野球がいちばん長かったのかな? 小学校の時に2〜3年やってて、その時はセカンドをやってました。で、その時に考えてたことって、意外とチームみんなのことじゃなかったなって。スポーツをやってる人って、自分がこのチームにとってどんな人間であるべきかをずっと考えてると思ってて。アーティスト業も意外と一緒で、お客さんとVaundyチームにとって俺がどういう人間であるべきなのかを考えてたりするんです。だから、チームプレイをする時こそ自分がどういう人間なのかがいちばん大事で、なんとなくそれが見える曲にしたいなと思って、目線を個人的なものに下げていきました。誰かのストーリーではなく、自分のストーリーに見えるようにしたいなって。──「熱闘甲子園」の曲の中では、その構図は珍しいね。集団から個を解放するみたいなノリがこの曲にはある。元々、僕にはそういう曲が多いんですよね。「頑張れ」って言う曲じゃないほうがむしろいいというか、頑張らなくていいけど、かっこよくいてくれ、というメッセージのほうが強いなって。僕が自分に言うんだったら、「頑張れ」じゃなくて、「おまえがかっこよくいたいんじゃないの?」という再認識でしかないと思うんです。だから、かっこよくいるためにどうするのかが、曲調でわかればいいかなって。あと、正直こういう曲だと歌詞はあってないようなものだと思うので、わかりやすいメロディと、みんなで歌うわかりやすい部分があるのが重要かなと思います。

俺らはたぶん、ドパガキって呼ばれている最初の世代なので(笑)。「聴く啓発」というか、ただスクロールする物語にならないような曲にしたい

──Aメロとサビの役割もはっきりしていて、それにまさにぴったり合うような歌詞になってるよね。Aメロは体とか本能を焚きつけるような歌詞で、サビは心を掴む歌詞になっていて。みんなにあるものみたいなのは、サビで出せたらいいなって。「熱闘甲子園」チームが、コロナ禍以降、選手が涙を流さなくなったって言ってたんですよね。涙が出ないのは、たぶんどこかで客観視しちゃってるんじゃないのかなって思ってるんですけど──涙はすごく重要なものなんだなと思って。僕はあんまり泣かないんですけど、泣く時は、なぜ泣いてるのかわからない時なのかなって。

なぜ俺は涙を流してるんだ、なんのために流せばいいんだ(《この涙何のために流せばいい》)って言って──《ベランダに落ちた鳥か/芽吹いた花か》というのは比喩なんですけど──目の前の悲しいことに泣くのか、それとも新しく芽吹いたものに対して泣くのか、って。最後の《忘れてたあの日憧れた僕か》は、自分でも忘れてた自分が持ってる憧れや、うまくいく/うまくいかないも含めてなぜこれを始めたのかに対して涙を流すのか。なぜ泣いてるのかわかんないけど、この出てくる涙は誰のためって言えばいいんだ(《この涙誰のために流せばいい》)、もしかしたら俺のためだって言えばいいのか──というのをみんなに当てはめてほしいんですよね。ここまで自分で頑張ってきたことに涙を流すんだと思うから、その意味を自分で考えてほしいなって。あえて答えをあんまり出さない曲にはしたんですけど、とにかくその直前までの話をずっとしてるんです──さあ涙が出てる、どうする? これはなんの涙なんだ、おまえたち考えろ、っていう曲になってるんじゃないかな。──だから、こういうテーマソングには通常ある起承転結のドラマ性みたいなものとは真逆にある曲だよね。そうですね。ストーリーを語らないという。ストーリーテリングしすぎると、自分がいるストーリーじゃないところで感動しちゃうから、「こういうふうに思ってたんだ」の答えがちょっと歪んじゃう気がしてるんです。そこは歪まないように自分を見つめ直すストーリーテリングにしていければなって。逆に言えば、それができてない人たちもいっぱいいると思うし──自分がどういうことで悩んでて、嬉しくて、悲しいのかを考えなくなってきてると思うから。悲しいことがあってもケータイをいじってれば時間が過ぎて忘れてくけど、スポーツはそうじゃない時間、自分を見つめる時間が多いと思うので、そこにテーマ曲として寄り添ってあげるほうが正しいのかなって。それこそストーリーになりすぎると動画を観るのと変わらないというか。──そうだね。俺も10代の頃は嫌なことだらけでクソみたいな人生だってずっと思ってたから、YouTubeとかにめっちゃ救われて。俺らはたぶん、ドパガキって呼ばれている最初の世代なので(笑)。こういう時代だからこそ、「聴く啓発」というか、ただスクロールする物語にならないような曲にしたいなって。聴いてもわからないから「これって俺らが考えなきゃいけないのか」って思ったり、この曲を聴いてチームメンバーとの何かを思い出したりする、そういう曲であってほしい。この曲が作り出す情景じゃなくて、この曲を聴いて思い出す情景が自分の中にあってほしいというのがいちばん大きいから、答えをあんまり出さない曲になってるんだと思う。──物語中毒のための薬や、それを緩和するための麻酔剤みたいなものではなくて、自分がほんとに向き合ってるものについて考えることを焚きつけるような曲だよね。そして、それがそもそも音楽が持つ本当の力でもあるし。元々はそうなんですよね。別にこの曲を使って自分が作った動画を出してもらってもいいんですけど、その画面にいるのは自分であってほしいというのは大きいかもしれない。ただ鼓舞するだけの曲にならなければいいなと思ってます。──そういう意味において、すごく画期的な曲だよね。どうなんですかね。めちゃくちゃ古めかしいものではあるけど。──確かにロックンロールで個を焚きつけるって超オールドスクールだけど、でも今誰もやってないことだから。みんなやっぱりきれいなんですよね。ストーリーテリングかどうかは置いておいて、詞もめちゃくちゃ寄り添ってるというか。頑張ってる子にちゃんと寄り添う曲ってすげえなと思って。俺はできないから、そういう応援の仕方ができる人たちはすげえなと思っていろいろ聴いてました。みんななぜ辛いのかを知ってるんですよね。俺は、自分の人生を振り返っても、なぜ辛いのかがわからないで生きてきてるから(笑)。他のアーティストはみんな、なぜ辛いのかをわかってるから、ちゃんと共感できる曲になる。ヒットする曲はちゃんと歌詞がいいと言われてるのは、そういうことなんだと思う。俺はもう、おまえが思い出せ、おまえが考えろ、好きにしろっていう感じだから。
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