(“死んじゃいないよ”は)デモの段階で、大智のギターが1箇所ミスってたんですよ。でもそのミスってる感じもよかったんだよなあ。あのデモだからこそ光が見えた(橘)
──話はちょっと戻りますが、“泣くもんさ”はまさに今のDISH//だからこその成熟したバンド感を感じる曲でした。この曲はどのように?
橘 俺と大智とで曲を作っていったんですけど、そもそもは、俺がグループ魂さんのライブを観にいったのがきっかけで。そのライブは、三宅弘城(石鹸/Dr)さんの誕生日イベント(「三宅ロックフェスティバル」)で、氣志團さんとの対バンライブだったんです。そのライブの中で“男は泣く”っていう曲があって、お客さんたちがそれを聴いて、笑いながら泣いてたんですよ。三宅さんも大号泣しながら歌ってて、それがむちゃくちゃいいなと思って。感動で泣くとかはあるけど、ゲラゲラ笑いながら涙が出るみたいな、そんなハッピーな涙がすごくよくて。それで大智がうちに来たタイミングで、「めっちゃ喰らっちゃったんだよね」って話しながら、曲を作る流れになったんですよね。
──なんと。グループ魂からのインスパイアでしたか。
泉 グループ魂さんのちょっとパンクっぽいというか、メロコアっぽい感じにしたいっていう話になって。サビだけ作ったのかな。6/8拍子の部分とかは、別で僕が作っていたものがあって、メロディラインが似てるところもあったので、これをくっつけたら面白いんじゃないかっていうので作っていったんです。これまでにない、面白い感じになったなと思います。
矢部 サビの最後の《きっと俺が居なければ/この地球も回らない/本当なんだって全部、》っていう歌詞とか、すごい柊生の人間性を表してるなあって思う。《俺が居なければ》って言いながら不安な気持ちもあって、それを《本当なんだって》って自分に言い聞かせちゃう感じ。そういうのも全部見せちゃうところがすごく柊生っぽくていいなあって。
──北村さんはこれを歌でどう表現しようと?
北村 歌う前に、「柊生は最近どういう生き方してんの?」みたいな話をして。それを箇条書きで書き出して。自分で書いた歌詞とは違って、柊生が書いた歌詞については、柊生がどう生きているのかを知って、その柊生を自分が表現する、みたいな。誰かの言葉を自分の言葉にする作業って、ある種、役者でいつもやってることでもあって、柊生が書いた歌詞を歌うときはいつもそういうイメージですね。それぞれ絶対に感性は違うし、こういうのってほかのバンドでもなかなかやってないことなんじゃないかな。
──北村さんが作詞した“死んじゃいないよ”は、タイトルで「死んじゃいなよ」に空目して少しドキッとして、実際そういう歌い出しなんだけど、最終的には温かい気持ちになる歌でしたね。
北村 今回のアルバムの中で、これがいちばん最初に書いた歌詞だったと思います。大智がアコギで作ったデモを受け取って、曲のアレンジをする前に、既に歌詞は書き切ってました。この曲ならどんなアレンジになってもこの歌詞で歌いたいと思えたから。そういうときって、やっぱり自分の死生観みたいなものが出る気がします。役者として作品の中で「死」に触れることもあるし、身近な人の死を経験することもあって、もう僕のテーマなんだろうなと思いますね。ライブのMCでもよく話すんですけど、それは自分が今吐き出しておかないと壊れてしまうみたいなところもあるからで。今回のアルバムの中でも、いちばん「自分ごと」を書いたのがこの曲でした。
泉 匠海の芯の部分が出た歌詞だと思います。いちばんピュアに書いている曲だなと。アコギと歌だけのデモからゼロイチでアレンジしていって、すごく新鮮な作り方だった気がします。
橘 この曲がいちばん最初に「これを入れる」って決まったんじゃなかったっけ?
北村 柊生がすごい推してくれてたよね。
橘 哀愁があっていいよねって言って。しかもデモの段階で、大智のギターが1箇所ミスってたんですよ。でもそのミスってる感じもよかったんだよなあ。録り直せよって話ですけど(笑)。
泉 ははは。確かに。
橘 でも録り直しもしない、あのデモだからこそ光が見えたというか。
北村 デモとしての完成度で採用・不採用が決まるわけじゃないからね。僕もこのデモには「あっ」と感じるものがあったから。
──そして“ファンタジーラブコール”は北村さんの作詞・作曲ですね。
北村 この曲はめちゃくちゃ懐かしいんですよね。“しわくちゃな雲を抱いて”のときの候補曲のひとつでそのときは採用されなかったけど、自分の中で“ファンタジーラブコール”はすごく好きだったんです。だから今回ふたりがこの曲を選んでくれたのを知ったときは嬉しかった。ほぼほぼ、歌詞も当初のままいじってないんじゃないかな。
──そしてラストが“エール”。これはDISH//が真正面から応援歌を歌うとこうなるという好例で。ライブでの光景が目に浮かびます。「そうだよね。わかるよ」っていうのが、僕の生き方なのかもなって思ったんですよ。理解して、大丈夫だよって言ってあげるのが自分の応援の仕方(北村)
橘 疾走感のある曲が1曲欲しいというところで作っていきました。この曲も今回のリード曲の候補でした。
矢部 早くライブでやりたいですね。匠海が書く歌詞って、ただ大衆に向けて「頑張れ」っていうんじゃなくて、一緒に頑張ろう、そばにいるからねって肯定してくれる曲が多くて、それが顕著に出てる曲だと思います。誰かを応援しながら、自分も一緒に頑張るっていう感じが好きなんですよ。
北村 柊生が“泣くもんさ”を書いたように、自分の中でもこの曲は「涙」がテーマだったんですよね。「泣いたっていいぜ」っていうメッセージが、別の角度からあってもいいよねって、カルロスさんも言ってくれたので。そこからシンガロングしたいという想定も生まれて、よし、じゃあこれはシンプルに応援歌にしようと。自分もやっぱり誰かに応援されたいし、誰かに「頑張ってるね」って言ってほしいんですよ。「みんなもそうでしょ?」っていう感じ。今、昌暉が言ったみたいに、「そうだよね。わかるよ」っていうのが、僕の生き方なのかもなって思ったんです。理解して、大丈夫だよって言ってあげるのが自分の応援の仕方で、「頑張れよ」じゃなくて「それで大丈夫だ」って。そんな「君は君のままでいいんだ」っていう曲が、このアルバムのゴールとしてふさわしいと思いました。
──あえてのストレートな応援歌。これも現在のDISH//だからこその説得力だと思いました。それとあと1曲、“咲く頃に”という柊生さんボーカルのバラード曲が、完全生産限定の『aRange BOX』にのみ収録されています。これは、一緒に暮らしている猫のことを歌った曲?
橘 そうですね。「咲(サク)」っていう名前なんです。「咲」っていう漢字は、「笑」の旧字でもあるんですよ。花が咲くみたいに笑うっていうイメージなのかな。咲はちょうどこれくらいの時期にうちに来た猫だったし、曲を作った大智に「好きに歌詞を書いていいよ」って言われて、書きたいことって何かあるかなと考えたら、咲のことが頭に浮かんで。タイトルも「猫」にしようか迷ったんですけど。
──それはちょっとややこしくなりますね(笑)。
北村 俺、この曲は“猫”へのアンサーソングだと思った。
橘 あっちの“猫”は比喩じゃん? これはガチで猫の歌だから。
北村 でもこれもある種、比喩だよね。咲っていう猫の歌なんだけど、人のことのようにも思えるから。
矢部 うん。確かにそうだよね。
──アルバムを引っ提げてのツアーも始まりますね。
矢部 ちょっと大人になったDISH//というか、ひとつ壮大なものを見せる感覚でライブを作っていけたらなと思っています。
北村 アルバムツアーは久々なので、新しいアルバムの曲が増えるのは当然なんだけど、こういうタイミングのライブは自分たちの在り方を更新できるチャンスでもあるんですよね。いろんなことが変わっていくと思いますし、アルバムのタイトル通り、演奏も歌も、曲の空気感はどんどんライブを重ねるごとにアレンジされていくツアーになるんじゃないかな。
橘 どんなノリでお客さんが受け止めるか、マジで想像できない曲も多いので、今すごくワクワクしてる。
泉 今、シンプルに4人で出す音を楽しめているので、もうそれに尽きるというか。今回のアルバムも全部自分たちのオリジナル曲だし、それを引っ提げて今の4人で音を出すのがいちばん楽しみ。バンドの楽しさをお客さんにも共有できるライブになったらいいなと思っています。
──5月5日はJAPAN JAMにも出演が決まっています。
北村 JAPAN JAMでも『aRange』の曲をやれるんじゃないかなと思っています。楽しみにしていてください。