【インタビュー】人生の中で多くの人が見て見ぬふりをしている「本当のこと」をリアルに歌うシンガーソングライター・八生が1stアルバムで描いた現実と後悔

【インタビュー】人生の中で多くの人が見て見ぬふりをしている「本当のこと」をリアルに歌うシンガーソングライター・八生が1stアルバムで描いた現実と後悔

【インタビュー】人生の中で多くの人が見て見ぬふりをしている「本当のこと」をリアルに歌うシンガーソングライター・八生が1stアルバムで描いた現実と後悔

自分の曲で笑顔になってほしいというか、楽しんでほしいという気持ちもずっとありますね

──引っ込み思案だった八生さんが、音楽活動を本格的に始めたのはどうしてなんですか?実は小さいときから「歌手以外、何になるん?」と思ってたんです。なので高校生の頃からいろんなオーディションを受けました。コロナ禍のときはムリだったんですけど、少しずつ再開し始めて。あるオーディションで準優勝させてもらって、そこから制作が始まったという感じですね。そのオーディションの最終審査の会場が東京のライブハウスだったんですけど、人前で歌うのはそのときが初めてで。ピックを持ってなかったから、アコギを指で弾いていたので、ストロークの音は参加者でいちばん小さかったです(笑)。──その後は高知のライブハウスを中心にライブ活動を展開されたんですか?はい。歌を作り始めた頃は「自分がいいと思えばいい」という感じだったんですけど、人に聴いてもらうことを意識するようになって、自己満足だけじゃダメだなと。自分のためという感じも大事だと思うんですけど、人に伝えるためにはどんなメロディがいいか、どう歌うのがいいかも考えるようになりましたね。歌詞に関しては……ドロドロしたところはあまり変わってないかもしれないです(笑)。もちろんそれだけじゃなくて、クスッと笑えるところも入れたいし、ブラックミュージック的な部分もあったり。自分の曲で笑顔になってほしいというか、楽しんでほしいという気持ちもずっとありますね。ドロドロしたところがある歌詞でも、メロディやサウンドで楽しく聴いてもらえると思うので。──1stアルバム『ハッピーエンドは未配達』は、これまでの八生さんのキャリアや道のりが反映された作品だと思います。“しゅらばんばん”、“大感謝祭!”などの配信シングルも収録されていますが、どんなテーマで制作されたアルバムなんですか?とにかく1曲1曲を丁寧に作って、しっかり届けたいと思ってました。特にテーマやコンセプトがあったわけではないんですけど、11曲揃ったときに「ないないづくしだな」と思ったんですよ。もう戻ってこない時間や生活、去っていった恋人、まだまだ遠くて届かない夢。できない、戻らない、取り返せない、届かないという感情がベースになっているなと思って、そこから出てきたのが「未配達」というワードで。その一方で「だからこそ、明るくありたい」という気持ちもあったので、「ハッピーエンド」とつなげてタイトルにしました。アルバムに入ってる曲のほとんどは3~4年前くらいに作った曲で。その頃の私はだいぶ受け身だったと思うんですよ。いつか幸せが来るだろう、いつか届くはずだという考え方だったというか……。だからこのタイトルになったのかもしれないですね。

──「届かない」という感覚が音楽活動のモチベーションになっていたところもあるのでは?そうだと思います。それこそ“ドリーマーズ”は、まさに夢を追いかけている途中の歌で。憧れの存在の背中を追ってるんだけど、自分の現在地がわかるからこそ悔しい思いをするし、「でも、だからこそ夢に向かっていける」という気持ちを丁寧に表現できたのかなと。実際、こういうことばっかりなんですよ。羨ましがりな体質だし、誰かに憧れたり、「こうなりたい」という気持ちが強くて。──《夜明けのファミレスは夢の窓》という歌詞もありますね。高知には24時間やってるお店があまりないんですけど(笑)、「このまま家に帰ったら、またウジウジした自分に戻ってしまう気がする」みたいな日もあって。自分にとっては原点回帰という、ちゃんと初心を思い出せる歌でもありますね。──1曲目の“ユートピアで眠りたい”は、失恋の喪失感を描いた曲。これも3~4年前の曲なんですけど、ちょうど私がお風呂に入ってるときに友達から電話がかかってきて、「さっき彼が出て行った」と言われて。「もうおらんと思ったら寝れんし、いつもの家がまったく違う場所みたいになってしまったが」という言葉から着想を得て作った歌ですね。自分の生活から大切な人がいなくなって、痕跡がどんどん消えていって。それはすごく苦しいし、悲しいことだけど、同時に幸せだったことの記憶も生活の中に残っている。その両方を歌いたいなと思ってたんです。──その友達には聴かせたんですか?はい。もう吹っ切れてるみたいで「いい曲だね」って言ってくれました。「あのときだったらギャン泣きしてたと思うけど、今は泣かないで聴ける」って。「この曲が支えになったらいいな」と思っていたので、嬉しかったです。──この曲を聴いて、同じような思いになるリスナーも多いと思います。“運命的ヒエラルキー”は、さっき話してくれた高校時代の経験がもとになっている?まさにそうです(笑)。ヒエラルキーの上位にいる人たちへの憧れだったり、劣等感だったり。思春期の頃って、感情の抑制が利かないじゃないですか。まだまだ心が育っている最中だし、気持ちが予期せぬ方向に行ってしまったり、必要以上に攻撃的になってしまったり。そういうこともしっかり描きたかったんですよね。──卒業して数年経っても、やっぱり忘れないんですね。そういう性格なんでしょうね。楽しい思い出もいっぱいあるはずなのに、ネガの部分もしっかり見てしまうし、それが色濃く残ってしまって。《きみさえ居なけりゃいいんだ》という歌詞も「こんなこと歌っていいのかな」という思いもあるんですよ。でも、自分が傷ついても歌にすることで、きっと人に伝わるものが生まれるんだろうとも思っているので。
【インタビュー】人生の中で多くの人が見て見ぬふりをしている「本当のこと」をリアルに歌うシンガーソングライター・八生が1stアルバムで描いた現実と後悔

“後悔後を絶たず”はどうしてもにアルバムの最後に置きたかった

──アルバムの最後に収められている“後悔後を絶たず”については?タイトルの通り、「後悔」をテーマにしている曲で。生きていく中で、選択しないといけない瞬間がいっぱいあって。選択肢の数だけ後悔が生まれると思ってるんですよね、私は。後悔しない生き方ってかっこいいなと思うけど、私はそうじゃなくて。だったら後悔を抱えて生きていくしかないっていう、ありのままの自分を歌った曲ですね。──八生さんは「音楽をやる」という選択をして、その道を突き進んでるわけじゃないですか。それでも「あのときこうしておけば、どうだったかな」と思うということですか?そうですね。たとえば周りの友達がどんどん結婚していって、「私は自分のやりたいことを頑張るんだ」と言い聞かせたり……。結婚して子供がいる友達と、後悔について語り合ったことがあるんです。私は「結婚して子供がいて、家を建てて車を買って。幸せそうで羨ましい」と思っているし、友達は私に対して「好きなことをやって自由に生きられて羨ましい」と思っていて。お互いに憧れ合ってるというか(笑)、どうしても「もし違う道を選んでたら?」と想像してしまうんですよね。それは誰にでもあることなのかなと。

──確かに。1stアルバムの最後の曲のテーマが「後悔」って、八生さんらしいのかも。ここから未来に向かって頑張る!ではなく、後悔も抱えて進んでいくというのは、八生さんのシンガーソングライターとしての個性なんだと思います。“後悔後を絶たず”はどうしてもアルバムの最後に置きたかったんです。フレッシュでポジティブな曲も描きたいんだけど、結局はネガティブな部分が入ってくる。だったら、そっちに振り切った曲を最後に配置するのがいいなと。バカ正直なのが自分のいいところだと思うし、そういうアルバムになったなと思いますね。──なるほど。次の目標としてはいかがですか?今もどんどん曲を書いているので、まずはそれを形にしていきたいです。あと、ワンマンライブをまだやったことないので、ぜひやりたいですね。高知のオレンジホールでも絶対やりたいです。──いいですね! ぜひ、地元で“運命的ヒエラルキー”を歌ってほしいです。歌いたいですね(笑)。高校時の先生とかも「オレンジホールでやるときは絶対に聴きに行くきね」って連絡をもらったことがあって。自分の目標でもあるんですけど、周りの人を喜ばせたいなという気持ちもあります。ヘア&メイク=Marin Kadowaki
【インタビュー】人生の中で多くの人が見て見ぬふりをしている「本当のこと」をリアルに歌うシンガーソングライター・八生が1stアルバムで描いた現実と後悔

次のページリリース情報
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on