──“曇りのち”みたいな、5・5・5・6みたいなリズムの曲って、どうやって作っていくんですか?“曇りのち”を変拍子にしたのは、聴きやすさを大事にしたからで、「変拍子を作りたかった」わけではないです。変拍子が最適だったから(北)
北 “曇りのち”も──変な話、弾き語りですね。
清水 基本、弾き語りの上にドラムを乗せていく感じなんですけど。拍子とかはもう、デモの段階で、ね?
北 そうですね。「ここはこうじゃないと気持ち悪い」って。
もぎ 最初、ついて行くのに苦労しました(笑)。
北 もう慣れたでしょ?
もぎ もう慣れたけどね。最初スタジオで「じゃあ合わせようか」ってなった時、「嘘やん!」って(笑)。
北 わかりやすくはしてるつもりなんですよ。変拍子にしたのは、聴きやすさを大事にしたからで。結構聴きやすいと思うんですよね。
──それも「変拍子をやってます」ってアピールする感じでもなくて、出てきたものを自然とやったらこのリズムだったし、これが自然だったと。
北 そうですね。全然「変拍子を作りたかった」わけではないです。変拍子が最適だったから。
──この楽曲を自然と思える演奏も尋常ではないですし、バンドとしての成長を物語る曲でもあると思います。メンバーの演奏と北さんの楽曲、お互いがお互いの成長を促してるところがありますよね。それを楽しんでるようにすら聴こえます。
清水 改めて見ると、みんな好奇心がすごいなって思いますね。だからこそ楽しんでやれてると思うし。「ここ、メタルの感じでやってみようぜ」みたいな好奇心もありますし。
──というか、ルサンチマンの音楽って本当に、ジャンルの壁とか枠組みとは無関係ですよね。
清水 そうですね。いつ、そういうジャンルの本物の人たちに怒られるかな?っていう(笑)。それは怖いですよね。
北 いや、でも正直、別に怒られたっていい。やりたいからやってるんだし。他の人たちへのリスペクトはあるんですけど……最近ライブを観ていて、めちゃめちゃ喰らったな、みたいなことが本当に減ってきたなって思うんです。昔はわけもわからず盲信していたようなアーティストを、今は意外と冷静に見ることができて。ちょっと手が届くかもしれないっていう自信がついたからこそ「こんなことをやるのはおこがましい」みたいな気持ちを、あまりメンバーから感じなくなったんですよね。「やるんならやっちゃおうぜ」みたいな感じで、どんどん垣根を越えていってる感じがします。
──前作は1枚目ボーカル曲・2枚目インスト曲、っていう形態でしたけど、今作では全15曲の中にインスト曲とボーカル曲が入り乱れるような構成で。でも逆に、これがルサンチマンの自然体なのかもしれないな、と今の話を聞いていて思いました。
北 そうですね。前回のアルバムはめちゃめちゃ肩の力が入ってましたね。1stフルアルバムって自己紹介的な意味合いが強いんで、わかりやすく「10曲は歌入ります、10曲インストです」って分けたんですけど。今回はそういう意味では肩の力が抜けていて。自分が組みたい曲順で、「ここのところにこの曲が来たら嬉しいな」の連続で15曲組んでみた感じですね。
──売れ線狙いのプロデューサーさんだったら、「インストの“dollon”じゃなくて、最後は“光”でエモく終わろうよ」って言うかもしれないですけど──。
北 ……全然言われなかったね。
中野 なんにも言われなかった(笑)。
清水 ライブでも“dollon”で終わるのはよくやってたんで。
北 だから、自分たちの中では“dollon”で終わるのは最初から決まってたぐらいで。これで終わる前提で「その一個前どうする?」って話し合いました。
もぎ エンディング曲っぽいもんね。終わりだなあって思う、これ聴くと。
──ライブも含めた、今のルサンチマンのリアルが凝縮されたアルバムっていうことですね。
北 そうですね。やっぱり、ライブに音源を擦り合わせていく、っていう作業を今する必要がある段階だと思っていて。「音源は聴くけどライブは行かない」って感じるバンドってザラにあるじゃないですか。だから、音源だけ聴いてるような人たちからすると、たぶん今ライブを観たら「別のバンドなんじゃないか」って思うぐらいの状態だと思ってるので。そこの擦り合わせが、今回のアルバムでできそうだなって思いますね。
──今回のリード曲の“きっとそう”と“約束は午後四時に〜”、楽曲はすんなりできました?「間違ってないよ」って断言するよりは、「僕もまだ100%結果を出してないからわかんないけど、たぶん間違ってないから」ってことが伝わってほしい(北)
北 “きっとそう”は早かったですね。でも“約束〜”は……「なんか曲作んないとやばい」っていう時に、中野がフレーズだけ作ってくれて。あれはたぶん、曲にする気もなかったぐらいのやつだよね?
中野 いや、あれはさすがに──。
清水 さすがにやばいと思った?(笑)。
中野 最初インストのつもりで作ろうと思ってたんだよね。
北 そのフレーズだけ僕がもらって、DTMでループさせながらデモを作っていった曲なんで。苦労度合いで言ったら結構難産だったかもしれないです。“BUT STRAIGHT”はリフから作ったり、“IAI”も中野が作ってきたリフだったり。作り方にテンプレートがないんですよ。でも最近は、テンプレがないのをテンプレにできるようになってきました(笑)。
清水 柔軟な曲作りだったよね。
──それ、いちばん大変なやり方ですよね。
北 そうなんですよね。そりゃハゲますよって。
中野 まだまだ大丈夫(笑)。
北 “約束は〜”は一個だけ、めちゃめちゃ完璧なリフがもらえたなと思っていて。逆に、これをどこで弾いてどこで出すか?っていう作り方をしてましたね。そういうのができるようになったなって。昔だったら、全編同じリフばっかやっちゃってたかもしれないです。その引き算ができるようになったことは、作曲家としてのレベルアップを感じますね。逆に“きっとそう”はすんなりできました。これも僕のリフと中野のリフを弾き合うみたいな感じなんですけど。リフができてから、メロディまでは早かったですね。
──歌詞はどうでした?
北 歌詞がスッと書けた曲は……ないですね(笑)。僕は結構、マイナスの感情を軸に作詞をすることが多いんで、それもしんどい理由なんですよね。自分がいかに一般的な人間か、歌詞を見てもわかると思うんですけど……伝え方をうまく歌詞っぽくしてるけど、結局すごく羞恥心、共感性羞恥みたいなものに過敏で。「これマジで恥ずかしいわ」っていうのを共感してほしくて書いてる感じがあって、やっぱルサンチマンなんだなって。別にバンド名も「ルサンチマンだ!」って思ってつけたわけじゃないんですけど、結果的に「これって偶然じゃないんだろうな」って思いますね。
──《突き当たって抜け出せない灯/下手な闇よりタチが悪い》(“きっとそう”)のフレーズだけでハッとする人は多いと思いますね。
北 バンドしかやってきてないので、だいたいバンドに対する曲ばっかりなんですけど(笑)。バンド仲間の同期とか、みんな「これが天職だ!」って言ってるんですけど、「本当にそうなの?」って感じることがあって。「みんなもう、行くところまで行っちゃってるから引き返せないだけじゃないの?」「みんな燃えたぎってやってるように見えるけど、本当に燃えてんの?」って。僕は、「本当は燃えてないかもしれない」っていう自覚があるんで、燃えてる感じを外には出せないんです(笑)。だから《差し当って36度5分》とかでも書いてる通り平熱なんですけど。でも、意外とそういう人って多いだろうなと思っていて。僕は今年就職の年なんで、新社会人とか同世代に向けての応援ソング的な意味合いもあるんですけど、引き返せなくなって、その中でやり甲斐を見出して、自分なりにうまく生きていこうとするのって、別に全然悪いことじゃないし、間違ってもないんですよね。でも「間違ってないよ」って断言するよりは、「間違ってないんじゃね?」っていう言い方にしたくて。「僕もまだ100%結果を出してるわけじゃないからわかんないけど、たぶん間違ってないから」ってことが伝わってほしいですね。
──そこは「間違ってないよ」って言わずに《間違ってないような/気がする》なんですね。人に対して詞を投げかけることの責任感があるというか。
北 そうなんですよ。アルバムには入ってないですけど、“スピードを上げなくちゃ”っていう曲も同じで、ライブに来てくれるお客さんをどういう形で裏切っちゃうか、ほんとにわかんないんで。「ついて来い」なんて言えたもんじゃないっていうか。「信用する」っていう人がいてくれるなら頑張ってやりますけど、自分は「絶対僕を信用してください」っていうスタンスではいたくないんですよね。昔から過酷な環境で育ってきたタイプでもないし、ほんと一般的な人間なんですよ、そこそこブレるし。かっこよくあろうとしてはいるけど……っていうぐらいの人間なので、マジで信用しないでほしいですね。
中野・清水・もぎ (笑)。
──でも、そういう感覚がバンド内で共有されてるからこそ、今回のようにひとつの生き物みたいなアンサンブルが実現できてるんじゃないかとも思うんですけどね。
もぎ そうですね。でも、普段そういう話をすることもないんで──。
清水 「そうなんやなあ」と思って聞いてました(笑)。
中野 僕、他の人の歌詞だったらたぶん、キモくてやってらんないだろうなって。
もぎ 「キモくて」(笑)。
清水 歌詞のことなんて、恥ずかしくてしゃべれないよね、メンバーで。俺らからも「歌詞がいいね!」なんて、恥ずかしくて言えないし。
もぎ それこそキモいよな(笑)。
北 人間そのもの、僕そのものを曝け出しすぎて……歌詞をメンバーに褒められると思うと、自分の生き方を褒められてるみたいで、気持ち悪い!と思いますね(笑)。
清水 普通にメロディもいいからね。
北 メロディを言われるのは嬉しいね。プロが言うんだから(笑)。