──そこがめちゃくちゃ奏功していると思います。そしてこの曲は初のドラマ主題歌になっていますが、このドラマがまただいぶパンチが強そうで。ビジュアルをパッと見ただけでは全然気づかなかったですからね、おばあちゃん役が梅沢富美男さんだって。図らずも育ってきたバンドとしての美意識みたいなものってあるんですけど、それ以外のところにも音楽の美しさってたくさんある(吉田)
吉田 そうですよね!? めちゃくちゃおばあちゃんに見えますよね(笑)。
──こういうコメディ感もありつつハートフルみたいな設定とズーカラデルというのは、すごく親和性がありそうで。
吉田 たぶんそうなんだろうと思います。最初にプロットを見た時には「ラスボスおばあちゃん」が大暴れする話なのかな?と思ったんですけど、序盤の台本を読んだらおばあちゃんと周りの若者それぞれの人生がある群像劇みたいになっていて、そこがすごくいいなと思ってます。
──まさに《映画になんてなんないぼくら》一人ひとりにも確実にあるドラマ性という。
吉田 もともと歌詞に書かれているようなことはなんとなく考えてはいて。こういう曲調の曲になりそうだぞというのもうっすら頭の片隅にありながら生活してきたんですけど。今回のお話をいただいてドラマとシンクロさせて考えた時に「すごくいいぞ」となったのを覚えてます。ずっと考え続けてることの、また新しい切り口の捉え方になったなという感覚でした。
──バンドの本筋とも言えるテーマとこの新鮮な曲調が合わさった、このズーカラデルがどんなふうに受け取られるのかがすごく楽しみです。
吉田 ……そうですねぇ(笑)。
山岸 不安でもあり楽しみでもあります。
鷲見 めちゃくちゃいいとは思うし。
──結成前に吉田さんが思い描いていたという、10人くらいの大所帯バンドが奏でる音にいよいよ接近した曲でもありますよね
吉田 確かに。間違いなく、よりいろんなものから解き放たれた楽曲ではあると思いますね。
山岸 音数は史上最多かもしれない。
鷲見 普段だったら自分たちで精査しちゃって、「シンセベースがこことここしか出てこないんだったらもう少し全体的に入れよう」とかしちゃいがちなところを、久保田さんのアイデアもあってピンポイントで必要な時に必要な音が鳴ってるというか。トラック数的には多くても、ちゃんと曲としては整理されていて。
吉田 そういう差し引きを間近で見たのは、本当に刺激的でしたね。やっぱり図らずも育ってきたバンドとしての美意識みたいなものってあるんですけど、それ以外のところにも音楽の美しさってたくさんあるんだということを、この曲を作る中であらためて感じさせられました。自分たちになかった視点をたくさん提示してもらえて、久保田さんも我々の音楽を受け入れてくれた部分もたくさんあったと思うので、いいやりとりができて楽しかったです。
──そういう関係で作業できたのも、10年やってきたからというのは大きいでしょうね。もっといいソングライターにならないとなっていう、自分の考えをめちゃくちゃ純度高く詰め込めた作品になったと思います。その結果、すごく外向きになってる気もして(吉田)
吉田 うん。自分たちの積み重ねに対しての自信が足りない状態でやっていたら、かなり大変だったと思います。
──そういう意味ではこれもまた10周年に相応しい結晶。
山岸 そうですね。うっすらと今年はいろんな曲を出していこうと計画していたけど、“友達のうた”と“ローリンローリン”“大喝采”という、全然違う方向性で作った曲が順番に出て、すごく面白いリリースの仕方になったので。ズーカラデルの面白い広がり方を見せられるのではないかと期待してます。
──そうなると10周年の後半に向けても俄然楽しみです。まだまだ期待していても大丈夫ですよね?
鷲見 むしろここからがやっとこちら側の仕込みが整った段階ではあるので。
吉田 (笑)。
鷲見 掲載時期的に言っちゃって大丈夫だと思うんで……アルバムが出ます!
──おお!
吉田 音はもうほぼほぼ出揃ってて。
山岸 またいろんなアプローチで作った新曲もたくさんありまして。
吉田 個人的には前作で『我々っていいバンドじゃん』って思ったんですけど、じゃあもっといいソングライターにならないとなっていう、自分の考えをめちゃくちゃ純度高く詰め込めた作品になったと思います。その結果、すごく外向きになってる気もして。めちゃくちゃいいアルバムなんじゃない?と今は思ってるところですし、早く聴かせたくてしょうがない気持ちです。
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