──歌詞に関して聞くと、タイトル通り「ゴースト」とか「幽霊」「天国」というワードが多いのはどうしてだと思いますか?「なんで僕はこんなにラブソングばっかり作ってるんだろう」って急にふと思いまして。今自分は何を考えてるんやろう、何を作りたいんやろうと思ったら、自分がそれまでためていた歌詞とかが全部しっくりこなくなって
この中で最初に作ったのは“夏に嫌われている”と“ゴーストタウン”なんですけど、その2曲を作る前までの2年間くらい、無意識的にラブソングを作ることにとらわれていた気がして。「なんで僕はこんなにラブソングばっかり作ってるんだろう」って急にふと思いまして。今自分は何を考えてるんやろう、何を作りたいんやろうと思ったら、自分がそれまでためていた歌詞とかが全部しっくりこなくなって。一旦ラブソングじゃない曲を作ろうと思って、その2曲を作ったんです。僕、前とその前のアルバムを作ったときもそうなんですけど、「このフレーズいいな」と思った歌詞を他の曲にも使い回しがちなんです。それは「思いつかない」という話ではなくて、テーマ感としていいなと。しかもテーマを作ってからフレーズを入れたんじゃなくて、自然とできて、そのフレーズが好きやからまた使う、っていうのがいいなと思ってて。もちろん最近考えてることとマッチするフレーズやから、どの曲にもフィットするし。そういうのが、今回は「ゴースト」「幽霊」「天国」みたいなフレーズでした。結構、お化け系の気持ちやったんで(笑)。
──お化け系の気持ち?
映画『シックス・センス』のマルコムの感じだったんですよね。マルコムって、男の子のために立ち回って、その子の悩みを解決して、でも自分にも問題があるじゃないですか。あの感じ、いいなと思って。あともう1個リファレンスになったものは、The SALOVERSの“夏の夜”。《僕は夏の虫》《人間には内緒だぜ》っていう歌詞があるんですけど、そういうふうにみんなと違う生活時間でコソコソしてる感じが僕の中であって。そういった気持ちに「幽霊」っていうフレーズがいちばんフィットしたんだと思います。
──普段人とあまり接することなく、みんなから見えないところで曲を作って、それが誰かの手助けになっていて、というのは、アーティストがそうであるとも言えますよね。誰も使わない言葉で、アーティストとは何かを表してますね。
確かに。そこまでは考えてませんでした(笑)。もっと表面的に、自分がお化けっぽいムーブしてるなと思って。今は引っ越したんですけど、作ってたときに住んでた住宅地が夜になるとマジで人がひとりもいなくなるんですよ。音もなくて。あまりコミュニケーションを取らず、街の人に会わず、音楽を作ってる感じがいいなと思ってました。
──恋人や好きな人に限らず、会えなくなった人のことを歌ってる箇所も多々あると思うんですけど、そこにはどういった想いがあると言えますか。具体的に言えば、《また話したいよ昔の友達》とサビで歌う“Brightside”とか、“Nost”とか。
しゃべれなくなった友達が結構多くて。ケンカしたとかじゃないんですよ。仕方なかった、みたいな。でも全部を許して、「戻ってきてよ」とはまったく思ってなくて。許してしまったら、対等に見てない気がしてしまうから。「かわいそうだから」「仲よくしてあげる」って気持ちが入っちゃったら、それってマジで上からじゃないですか。それは嫌だなと思いながら、でも楽しかったのは事実だから、全部クリアになって、何も考えずにみんなで遊べたらいいなとは思う……という感じですかね。でも気持ち的には「諦め」かもしれないです。
──今作の歌詞で、いちばん気に入ってるものは?
“スコップ”です。人生で作った曲の中でいちばん好きですね。理由はないです。理由がないものがいちばんいいっていう美学が僕の中にあるので。理由があるならそれはそんなによくないです。“スコップ”は、僕がいいと思ってるから1ミリも売れなくてもいいと、胸張って言える状態です。僕、高校生の時から曲を作ってるんですけど、そのときは全部このテーマで作っていて、その完成形みたいな感じがします。あと「スコップ」っていう言葉が好きですね。「スコップ」ってよくないですか? ちっちゃくて、かわいいおもちゃみたいで。ショベルは工事とか雪かきでも使うけど、スコップはちっちゃい花を植えるくらいのもので、「スコップ」という言葉が持つ印象の全部が好きですね。優しくてあったかい感じがします。
──1月のアルバムツアーは、どんなものにしたいですか?そろそろ始めないと超ダセえドームライブになるなと思って。できることは全部ちゃんとやりたいなと思います
1個大きく違うのは、次のツアーからギターを入れようと思ってます。もともと入れたかったんですけど、一回ドラム、ギター、ベースのバンドセットでやったときに、すっげえチグハグになって。ミュージシャンを無理やり集めてもよくないんだなと、そこで思って。やりたいって言ってくれるミュージシャンと出会ったらやっていこうと思っていた中で、とあるギタリストがやりたいって言ってきてくれて、「じゃあやりましょう」と。
──そこにドラムの千弘さんも入って、だいぶ豪華な編成ですね。去年のインタビューで、理想のフロアはヒップホップのノリで跳ねながら合唱してくれることだと語ってくれましたけど、そこからフロアの変化を実感してますか?
ライブを意識して曲を作ったり、実際にそれをライブでやったり、ということを繰り返したときに、全部をクリアすることはできないなと思って。聴き心地も、歌詞も、ライブの盛り上がりも、全部を取るのは無理だなと。そう思ったときに、僕的に最初に捨てるのはライブのノリやったんですよ。一旦自分がいいと思う曲を作って、ライブのことはあとで考えようと。やっぱり僕は曲を作るのが好きなので、すべてを削ぎ落としたら、自分がいいと思う曲を作る以外のことは考えないようになって。でもそういう気持ちでやっていたわりにはいっぱいライブもしていたので、僕の中に「ライブでちゃんと映えるような曲」という物差しができていて、あまり意識せずともライブで全然イケる曲になったと思います。でも、曲がめっちゃ好きだったらなんでもよくないですか? 全員が「曲がめっちゃいい」と思ってライブに来てくれたら、実はノリ悪くてものれるっしょ、っていう気持ちになっていたところもありました。
──今作の曲の中でも歌われているように、ドームに立つ想像はできてますか?
こないだ京セラドーム大阪でYOASOBIのライブを観たんですけど、自分が立つのを想像したら、今のうちから準備するものがいっぱいあるなと思いました。演出とかも、たとえばスクリーンをどう使うかとか、第三者に「こう使ったほうがいいよ」って言われて「ああ、わかりました」じゃなくて、自分がいちばん解像度を上げた状態で理解しておきたいなと思います。ライブにはいろんな良さがあって、アコギ1本で立つ熱さもあるだろうし。だから自分の正解を探すために、大きなライブをいっぱい観て、自分がライブをするときに面白いかもと思うものは全部トライしてみて、ということをそろそろ始めないと超ダセえドームライブになるなと思って。できることは全部ちゃんとやりたいなと思います。