やっぱ生きていかなきゃいけないし、こんな汚い世の中だけど、そこをなんとかしようよっていうのが、俺はロックバンドとしての在り方なのかなって思ったんですよね
――他にも新しいトライアルがふんだんに入っていて。歌詞もそうなんだよね。非常に叙情的だし、リリカルで。これはどういうふうに作っていったの?「サビの《ありふれた日々を塗り替えていく》っていうところがあって、そこからひもといていきました。歌詞って、昔から言っていますけど、まず歌があっての言葉だし、正解はメロディにあると思ってるから。メロディと一緒に出てきた言葉が、僕は正解だと思うんですよね。このメロディにハマっているものは、自分の脳みその理解を超えたところで出てきたものだから、そこには絶対にリンクがある。リンクをひもといていくのが、歌詞の作り方だと思うので。っていうのを、僕はずーっと、なんとなく思ってはいたんですけど。ここ最近は、特に理解して書くようにはしてますね。だから、文法とか、意味が通っていることよりも、まず先に言葉を並べてみる。そこから調整していきました。まあ、そのときに自分が考えていることが出てくるので。あ、ごめんなさい、この曲はサビの一行目だけじゃなく最後までありましたね。《夢になるのを/待てないよ/消えてしまう前に》を歌ったときに――今も覚えているんですけど、すげえ気持ちよかったんですよ。ああ、言いたいこと言えた!って思いながら歌詞を書き起こしたときに、どういう意味?ってなって(笑)。それでも、これを僕は言いたかったんだな、書き出したかったんだなって思って、なんとかこれで辻褄を合わせるという作業をして。まあ、昨今って幻想とか夢物語、夢の世界的なものが壊れることが多かったじゃないですか」
――そうだね。
「アイドルさんやタレントさんが、夢を売る仕事ですって言うなら、ロックバンドは現実を教える職業だって俺は思うんですよ。もちろんリスペクトはあるんですよ。でも、夢はあるかもしれないけれど、やっぱり生きていかなきゃいけないし、こんな汚い世の中だけど、そこをなんとかしようよっていうのが、俺はロックバンドとしての在り方なのかなって思ったんですよね。こんなポップな、キラキラした曲だけど、このまま書き起こそうって、こういう歌詞になったんです」
――この曲には非常に感情移入できる。なぜかというと、一度負けて、それでもっていう「それでも」の部分があるからなんだけど。そのスタンスで曲を書くって、ソングライター川上洋平としては、そんなに多くないと思うんだよね。特に2番。《何度 何度 打たれたって/笑ったような顔つきで/自分自身騙して思い込んでいく》とかね。すごくいいよね。
「2番は、すごくストレートに書きました。2番って、だいたいストレートなんですよ。1番の答え合わせが、2番なのかもしれないです。よりブログやコメント、コラムに近いものが2番にくることが多いですね」
――これは自分の中で、素直に書きすぎているなっていうところもあるの?
「ありました、ありました。ありましたけど、これぞ川上洋平だよなって、客観的に見たときに思ったので、このままにしました。しかも、それが1番の説明にもなるのかなって思ったから」
――ごまかさずに、はぐらかさずに書いてるよね。これが今のモードなんだろうなと思ったんだよね。
「このままですね。ほんと、このままのモードではあります」
――それは、今の年齢と、今のキャリアと、2023年っていうタイミングもひもづいているの?
「まあ、あるでしょうね、そこは。あまり考えていないですけど、今、自分が感じているものが、素直に出ている。曲調的には、次の我々の一手を象徴するものではないと思うんですよ、実は。でも、歌詞の内容は、来年というか、正直[Alexandros]自体を、ものすごく象徴しているものではあると思います」
この平坦な言葉を通して、その向こう側にあるものを見せるほうが、もしかしたら面白いのかなって。(“ワタリドリ”の)《追いかけて 届くよう》もそうだし、(“閃光”の)(《鳴らない言葉》もそうだし。そこを通してどれだけ味だったり、苦みを絞り出せるかっていう
――歌詞についてもう少し聞きたいんだけど、《ありふれた日々を塗り替えていく》っていうラインだけ取ると、みんな言いたがることだよね。でも、そこを洋平らしい詩的な部分で、きっちりと作品にしている。そのへんはどう?「そこは正直、最初に変えたいと思った部分ではあるんですよ」
――うん、そうだったんだね。
「文字通りありふれてると思ったし。でも、だからこそそこを逆手にとって、それを塗り替えるっていう意味で。ダブルミーニング的に、こんなありふれた言葉だけど、それを塗り替えていくっていう意味で置いておこうと思ったんですね。それが、《なんの変哲もない“某日”を》と繋がるんですけど。この平坦な言葉を通して、その向こう側にあるものを見せるほうが、もしかしたら面白いのかなって思って。これを変えたら、むしろストレートになりすぎちゃうと思ったんで。だから、このままいって、裏にあるものをどれだけ見せられるのかっていう作業に入った感じです」
――今までの洋平なら、《ありふれた日々》っていうサビ頭はきっと変えたんじゃないかと思って。でも、それをそのままにしているのは、この曲は全体として言いたいことが言えたっていうことなんだと思った。
「そうですね。無理やり変えちゃいけない部分だなって思う瞬間があるんですよね。(“ワタリドリ”の)《追いかけて 届くよう》もそうだし、(“閃光”の)《鳴らない言葉》もそうだし。なんかね、そこが自分なんですよ、結局のところ。だから、そこを通してどれだけ味だったり、苦みを絞り出せるかっていう。別に言葉なんてなんでもいいのかなっていう境地にもなっていて。この人がこの言葉を歌うから“todayyyyy”も、この人なりの“todayyyyy”になるだろうし。っていうところで、もう怖くなかったですね。言葉の良し悪しでアーティストの味は測り得ないでしょ、俺の味は消えないでしょ、とさえも思ったかな。そこに関して考えることはやめてますね。やめてますっていうか、必要ないでしょって思ったんですよ。歌詞って、考えるものじゃないんですよね。文章であって文章じゃないから。もしかしたら、いちばん音楽的なとこなのかもしれないし、そうでありたい」
――この曲はシンプル。だけども、すべてのパートに、こうでなければならない気持ちよさがある。僕は人気曲になると思います。
「ありがとうございます」
――2024年も、この曲から始まるんで。
「そういう感じですね」
――来年こそ大忙しだよね、[Alexandros]は。
「うん、今年以上に忙しい年にしたいですけどね」
――3月が青学リベンジ(『Back To School!! celebrating Aoyama Gakuin's 150th Anniversary』)で。
「ついにできますよ。あのとき(青山学院大学でのライブは、当初2020年3月に開催が予定されていたがコロナ禍の影響で中止となった)まだ、リアドがサポートだったし。胸張って行ける状態のほうが、よかったと思います。あとはフェスがありますね、自分たちの(2024年10月26・27日に開催される野外主催フェス『THIS FES '24 in Sagamihara』)」
――今から正解を聞きたいわけじゃないんだけど、どういうイメージなの?
「いや、ほぼゼロですよ。だからこそ俺は面白味を感じたので。長く続けていけるようなフェスにしたいと思ってますけど、やらないとわからないから。結局フェスって遊園地じゃないので。そこで、みんなで作っていくものだから。相模原のみなさんと、世界各国から、日本全国から来てくださるみなさんで、アーティストのみなさんで、そのときに初めてわかるフェスを作っていきたいと思います」
――2024年はそろそろアルバム作ろうよ、みたいな話も?
「もちろん。その前に、20曲、30曲ぐらい作って、で、泣く泣く削っていく作業をやってみたいです(笑)」
――「やってみたい」ね(笑)。
「そういうの、長らくやっていないんで。完璧なアルバムになると思います」
――広がるね、未来がね。
「広がりますね。ここに来て、まだまだ。てっぺん目指して頑張ります」
ヘア&メイク=坂手 マキ(vicca)
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