2014年、宇宙まおはあらゆることにチャレンジしてきた。サッカーJ2リーグの水戸ホーリーホック応援歌“無限の力”書きおろし、本拠地水戸のスタジアムや、フードフェス「まんパク」での連日のミニライヴ、フランスで開催されたJapan Expoでの演奏……ライヴハウスや音楽フェス、イベントといった「いつもの場所」から離れたアウェイの地で、音楽を聴きに来たのではない人に歌を届けた。普段出会わない人と関わり合うその1年を経て彼女は、自分の歌が見知らぬ「誰か」にではなく、見知らぬ「あなた」に届くイメージをリアルに抱くことができたという。5月6日にリリースされるワンコインシングル『夢みる二人/おいしいごはん』はどちらの曲にも、「大事な人との食事」という生活感のある普遍的なモチーフに、聴く人すべてを笑顔にしたいという気持ちが表れている。たとえば“夢みる二人”には、≪ついてきて ぼくに/その先は 必ずや まんぷく!≫というフレーズがある。これまで以上にポップでキャッチーな陽性メロディに乗せて、この自信を解き放つことができるようになった進化の道のりを語ってもらった。なお、宇宙まおは今年の「まんパク」でも、5月14日~6月1日の開催期間中、毎日ミニライヴに出演する!
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いろんな場所で歌って度胸がついた。途中で「これじゃないな」って思ったらそういう曲はやめたりとか、臨機応変にできるようになった
――去年1年は普通とはちょっと違う活動ができた1年だったのかなと思っていて。ホーリーホックの本拠地のスタジアムで歌ったり、「まんパク」のフリーライヴもあったり……そういう場所で歌う経験をした時に、普段自分が歌っているライヴハウスやフェスっていうところと、どういう違いがあると思いましたか?
「やっぱりそこにいる人の種類が全然違う。たとえばライヴハウスとか、フェスとかは、音楽を聴きに来ている人と、音楽をやる人という関係がはっきりしているんですけど、そうじゃなかったので。そこにいる人も私も、お互い求めているものが最初はわからない状態っていうか」
――たとえばサッカーの会場だったら、そこにいる第一の目的はサッカーを観ることですよね。その中で、自分の歌を歌うとなって、何を思いました?
「最終的にはすごく仲良くなれるし、そうしようと思ってやってました。たとえば、人と人が最初に会った時と同じで、お互いにどういうところが共通していて、どういうものを求めていて、この人にはこういう話題を振ったほうが良いかな?とか、そういうことを考えるのと同じように、音楽でもこういう歌を歌ったほうが良いかなとか、その人に自分のことをより知ってもらって、興味を持ってもらうためにはどういう曲を歌ったら良いのかなっていうことを考えました」
――フェスやイベントでも、自分のことを知らないお客さんが観に来る場面もあるじゃないですか。そことの違いはありましたか?
「何かそういう根本的なことを改めて思い知らされたっていうか。いちからそこにいる人と、その場で感じながらやるってことがやっぱ基本だなと思って。空気を読み取って、自分でその日のステージを作るっていうことは、音楽フェスであろうが、そういうまったく関係ない場所でやろうが、一緒なんだなっていうのを『まんパク』を経て感じましたね」
――なるほど。たとえば水戸ではウルフルズのカヴァーもやったと聞いて。カヴァーって今まであんまり観たことがない印象だけど、それもそういう中でやっていこうと思ったんですか?
「そうですね。その会場のこととか、そこに来ている人がその日どういう気分で来てるか、その中で自分に何を求めているのかっていうのを考えて、『じゃあこの曲やろうかな』っていうような考え方をしてましたね。やっぱり宇宙まおを聴きに来てるわけじゃないから。そこはライヴハウスとかでやるのとは違う発想になりましたね」
――「まんパク」の時は、その場でセットリストを変えたりしました?
「しましたね。途中で『あ、これじゃないな』って思ったらそういう方向の曲はやめたりとかっていうのは、臨機応変に。これまではバンドが多かったので、急に『これやめます』とか言えなかったけど、ひとりだからやりながら考えて、その場で変えるっていうのを気軽にやってましたね。決めてきたことを精一杯、最大限見せるということよりは、そこでどういうものを作っていくかを考えるみたいなことができるようになりました。いろんな場所で歌ってだいぶ度胸がつきましたね」
――ほんとうにその場その場で作っていくっていうことですよね。もうひとつ大きいトピックとして、ホーリーホックに応援歌を書いたということがありました。ちなみにサッカーって、特別に好きだったんですか?
「いや(笑)、子どもの時は体育でやったり、近所の子とやったりしてたけど、テレビでわざわざ『今日はワールドカップだ!』みたいなものもなかったし、だから本当に、今回のことがなければ関わらなかった世界だなって思います」
――これについては、もう誰のために書くかっていうのは、明確に決まってるじゃないですか。けど自分とは縁遠い世界だったわけですよね?
「うーん、でも何かテーマを持って書くっていうことも、人のために書くじゃないですけど、そういうこともしたいと思っていたので。もう自分から『書かせてください!』って言って。最初はライヴだけが決まってたんですけど、それが1回台風で中止になっちゃって。それまで少し時間があるから、ちょっと1曲、応援ソングを書かせてくださいって自分から頼んだことが始まりだったんです。やっぱり、自分自身への挑戦ということで。自分の中で普段、宇宙まおを表現するには、余ってる言葉っていうのがいっぱいあるなと思っていて。それを使うためにも、全然違う世界のことを思って歌うと、『私が歌うから』ってことで排除してきた言葉みたいなものを入れることができると思って。自分の中にまだまだ表現の幅があるっていうふうに思っていたので、それを試すっていう意味でも、すごくやりたいと思いました」
これまでは歌う時のことを考えずに作ってた。でも、“無限の力”と“夢みる二人”は、確実に歌う場所があって、そこに来る人の顔も見えていたので、やっぱり出てくる言葉が全然違った
――去年の一連の活動の前に、やっぱり『ロックンロール・ファンタジー』っていう大きな作品があったじゃないですか。それを作り上げた時って、すごい達成感があったと思うんですよ。ただそれと同時に、今も言っていた、自分の中に、まだ使えるけど、今の自分のスキルだと使えないものがあるっていうような、つまり、もっとやれるっていう気持ちがあった?
「自分が10の力を持ってるって思っていて、だけど実際は今のスキルで2までしか(力を)出せてない。でも精一杯、とりあえず全力で2まで、みたいな感じで『ロックンロール・ファンタジー』は作った印象があって」
――やっぱりあの作品を作るのは相当なエネルギーが必要だったと思うし、それを精一杯やり遂げたと思うんです。ただそれでもやっぱり、まだまだ自分の中に可能性があると思っていた。それをすぐに広げていこうと、自分から挑戦していこうとするっていうのは、すごいバイタリティがあるなあと。
「やっぱり10できるって自分で思い込んでるので(笑)。だからやらずにはいれないというか。もしかしたらできないのかもしれないけど、とりあえず、自分の中で余っているところが何となくあるのがわかるので。それは使わずにはいられないみたいな感じでした」
――たぶんずっと、ひとりで家で曲を作ってる頃から、自分にはこれだけ可能性がある、っていうヴィジョンが具体的にあったと思うんですよ。ただ、どうアウトプットをしたらいいんだろうっていうところが、なかなかイメージしづらかったんだろうなって。
「そうですね」
――で、そこから作品を作るようになっていって。じゃあたとえば10いけると思っていても、実際は1しかできなかった。いろいろ工夫をして今度は2まできた、じゃあ次は3を目指そうみたいな。経験を経るごとにどんどん足がかりが掴めていって、成長していく感覚というか。
「3にいくためにはどうしたらいいかっていうのは、やっぱり2の段階では全然わかんなくって。そこでちょっと時間を置いて、たとえば『まんパク』でライヴをしたり、フランス(Japan Expo)に行ってみたりっていうことをして、自分に必要なことがちょっとずつ見えてきて」
――ちなみに、10まであるとしたら、今はどこまで来たと思います?
「でもまだやっぱり4ぐらいかな。これまで一生懸命2まで進んできた分があって、この何ヶ月かで一気に2進めたっていう感じはあります。それぐらいのスピードで今、自分が進んでる気はします」
――0から2までは、すごく時間がかかったかもしれないけど、その分、土台がしっかりできているというか。進み方が掴めてきた。だから短期間でそれだけ進めたのかな? 2にいくまでは何年もかかったけど、そこから4までがこれだけ短期間で進んだっていう、自分の中で自分が成長できたっていう実感、自信とか、そういうものがすごく今回の曲に表れているなという気がするんですね。たとえば”夢みる二人”のフレーズに、《ついてきて ぼくに/その先は 必ずや まんぷく!》っていうフレーズがあるんですけど。言ってしまえば全能感のような、そういうイメージが見える。そういう感覚っていうのはあります?
「全能感って言ってしまうとあれですけど、前はそういう詞を頑張って書いても、やっぱり頑張って書いたっていうか。自分では自信ないけど、とりあえずでっかく言ってみようみたいな気分で書いてたものが、やっぱり今はわりと、嘘がない詞にはなってるかなって思います」
――”おいしいごはん”は暗さと明るさが混ざり合っていてリアルな感覚が残されているんだけど、”夢みる二人”のほうは、ずっと明るいというか、もう100%陽性という感じで(笑)、自信が溢れている印象がある。さっき言ってた、イベントとかで、お客さんと絶対コミュニケーションが取れるんだ、絶対伝わるんだっていう、自分が柔軟に対応すれば、届くんだっていう実感が活きてるのかなという感じはすごくします。
「うん、これまで、“おいしいごはん”ぐらいまでは歌う時のことを考えずに作ってきたんですけど、やっぱり”無限の力”と”夢みる二人”は、もう確実に歌う場所があって、そこに来る人の顔も見えていて。そうすると、やっぱり出てくる言葉が全然違うなって思いました」
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