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本プロジェクトにおけるヴィジョンとは?

――(“Everything Is Going to Be Alright”のようなクラシック音楽を取り入れた活動がよく知られている)スウィートボックス以来、取り組んでいるクラシック、ヒップホップ、ダンスポップの融合を追求したかどうかについて
「『マッシュアップ』を何年もやってきたのでそのつもりはなかったんだ。実際もう全然やりたくないと思っていた。シンフォビアは元々シンフォニーの色々な音楽ルーツをベースにして新しいものを生み出そうというテーマだったんだ。だから、ヴォーカルはあまり重要ではなく、ある種の「サウンドトラック」のようなものを作ろうと思ってたんだよ」
――プロジェクト始動のきっかけ
「シンフォビアを始動した当初、アディーシャとはすでに一緒に制作をしていたんだ。楽曲の1つにラップをのせて貰ってね。あまり合理的なステップではなかったけど、なんにせよ僕がそれをとても気に入って、2曲目、3曲目と続いていった。ふとある日、もう何曲も彼女の歌った曲に『いいね、やってみよう』と言っていることに気付いたんだ。それで元々のコンセプトを変えることになった。時間が経っても抜けない昔の癖みたいなものだね」
――クラシックを取り入れるという手法を続けている理由
「僕にとってクラシック音楽は今までずっと身近なものだった。知っている人はあまりいないけど、クラシック・ギターを習っていたことがあって、そのときにクラシック音楽と出会ったんだ。現代のものから400年前のものまで、“皮膚の下の隠されたコード”とでも呼べるかな、観客には聞こえないものがあるんだ。その瞬間すべてが変わったね。人はこれを“感情”と呼ぶんだろうけど、僕にとってはそれ以上の衝撃だった。自分の寝室の後ろに別の部屋へのドアを見つけたような感動だった。唯一時の流れとともに変わったのは、その形態、もしくは僕らが『サウンド』と呼ぶものだと思うね」
――クラシックというジャンルの解釈
「もちろんクラシックはとても特別なものだよ。疑問の余地もない。僕にとってクラシックはこれまで生きてきた最も才能溢れる音楽家たちの図書館のようなものなんだ。それに、僕にとって『普通の音楽』なんてものはない。音楽にはただ良いものと悪いものがあるだけなんだ。スタイルや時代に関係なく、音楽とは音楽家たちの野望なんだよ。踊るための音楽と、聞くための音楽はそもそもの性質が異なるんだ」
――クラシックをモチーフとしつつも、卓越したポップス性をもつGEOのサウンドについて
「僕は他の作曲家の作品、特にバッハやベートーヴェン、ラフマニノフといった手の届かないような偉人たちの作品をただ借りるだけ、ということはしないようにしている。最初はまず、原曲が何をテーマにしていたかリサーチするんだ。もちろん、自分の分析が100%合っているとは思わないけど、大事なのは動機、つまりその曲を作るきっかけとなった最初の気持ちを知ることだと思っている。リズムであったり、メロディー、ストーリー、サウンドなどから分析していく。その後に自分の曲を作り始めるんだ。ベートーヴェンを使う、という制約がない方が1曲書き上げるのは断然簡単だよ。耳元で偉人に『まだ十分じゃない!』と叱られながら曲を作るようなものなんだ。一筋縄ではいかないけど、僕はそれが好きなんだ」
――プロジェクト名について
「サウンドライブラリーで偶然『Symphobia』という言葉を見つけて、それが頭に残っていたんだ。元々は、シンフォニーに怖がることなんて何もない、という意味で単語の最後に疑問符をつけて『Symphobia?』にしようかと思っていたんだよね。ヨーロッパの若者にとってクラシック音楽はあまりイケてるものじゃないから」

――ジオが制作するトラックの第一印象
「正直言って、とても感動したわ。というのも、彼と会うまで私は今までクラシックとアーバンミュージックの融合なんていうのはよく知らなかったから。こういう音楽がこんなにアーバンで格好良いってことも知らなかった(笑)。彼は本当に格好良い曲を作ってる。彼が新しい曲を聴かせてくれる度に本当に興奮したわ」
――ジオとのコラボレーションについて
「私たちは初日からすぐに打ち解けて、一緒に制作するのもとても簡単だったわ。もちろん、長い間一緒にいれば相手の人のことを分かってくるし、何か言いたいことがある時も言い方が変わってきて、最初の頃のようにいつでも簡単で居心地が良いってわけにいかないことが分かってくる。でも全然仲が悪くなったってことではなくて、これは良いことなの。私たちはお互いを分かりあってるし、さっぱりしてる、それにお互いを尊重し合って自由にしているの」
――作詞をする上でのインスピレーションについて
「アルバムのほとんどの歌詞、特にラップの部分については私が自分で書いたけど、2人で歌詞全部をチェックして、追加、削除、変更といった作業をしていったわ。サビの部分については、ほとんど2人で一緒に作ったわね。インスピレーションになっているのは私自身の経験だったり、想像、夢とか、あとは今まで聴いてきた音楽ね」
――影響を受けたアーティスト
「女性シンガーのアナスタシア、アリーヤ、デスティニーズ・チャイルド、あとはバスタ・ライムス、ジェイ・Z、J.コールといったラッパーね。いつも彼らの声を真似しようとしていたし、バスタ・ライムスに限っては彼のラップを真似するために何時間も部屋にこもって歌詞を見ながら練習するほどよ」
――音楽活動を始めたきっかけ
「読み書きができない頃からもう決心していたの。両親はよく私を自分たちのコンサートとかパフォーマンスに連れて行ってくれたし、自分もそういう方になりたいっていうのは小さい頃からはっきりしてた。おかしいわよね、それ以外に何も考えたことがないの。子どものときに友達が学校に病気の犬を連れてきたことがあって、その1週間くらいは獣医になりたかったってことはあったけど」
――これまでの活動経歴
「正直に言って、人前でパフォーマンスをするときは歌うだけだったし、まさか自分にラップをするチャンスがくるなんてことは全然予想していなかったわ。ラップを書いたり、それを鏡の前で一人でやってみたりはずっとしてたけど。ジオと出会うまではラップを人に見せるのは気恥ずかしったんだけど、彼は私にそれを聴かせるだけじゃなくて楽しみながら上達させてくれたの。レコーディングをして、自信を持てたし、違和感もすっかりなくなったわね」
――ジオとの創作活動の魅力

「私にとって一番重要なのは音楽を楽しみながら作れることで、ジオとは本当に楽しんでやれてるわ。真面目なときには真剣にもなれるし、次の瞬間にはバカみたいなジョークを言ってたり。彼はもう私にとっては家族みたいなもので、家族っていうのは時にはうんざりすることもあるけど、結局はそれも全部愛なのよね」
進化する「クラシック・ミーツ・ポップ」サウンド
アーティスト情報
スウィートボックスやエタニティとしての活動で知られるサウンド・プロデューサーのロベルト “ジオ” ローサンとシンガーのアディーシャによるプロジェクト。ジオはヨハン・セバスティアン・バッハの“G線上のアリア”をベースとしたスウィートボックス“Everything's Gonna Be Alright”(1997)の世界的な大ヒットを契機に、“For The Lonely”、“Cinderella”、“Life Is Cool”、またエタニティ名義の“Wonderful World”などクラシック音楽をベースとしたヒット曲を多数発表し、数々の賞を獲得している。一方のアディーシャはガーナ出身のミュージシャンである父と、ドイツ人でフルート奏者の母を持つシンガー/ラッパー。その歌声がジオの目に止まり、2014年に「アーバンポップがクラシックに出会う」最新プロジェクト、シンフォビアがスタートした。4曲の配信シングルの発表を経て、2月18日にデビュー・アルバム『ノクターン』をリリースする。
ディスク情報

『ノクターン』(Noc-Turn)
2014年2月18日(水)発売
¥2,160(税込)品番:AVCD-93096
- ウィ・アー (feat. ダニエル・ダイス) ~運命へのエール~ / We Are (feat. Daniel Dice) ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」
- アイ・ドゥ / I Do I Do チャイコフスキー「白鳥の湖」
- 追憶のラフマニノフ / Rachmaninov ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
- ブラン・ニュー・デイ ~新たなる未来へ~ / Brand New Day グリーグ ペール・ギュントより「朝」
- 愛という名の憎しみ / Hungry ベートーヴェン ピアノ協奏曲5番「皇帝」第2楽章
- トータル・エクリプス (feat. ダニエル・ダイス) / Total Eclipse (feat. Daniel Dice) バッハ 「トッカータとフーガ」
- 至上の愛 / I Need Air バッハ 「G線上のアリア」
- 欲望のままに / Play ショパン 「ノクターン」
- 過ぎ去りし運命 (feat. ジェイド&マリノックス) / What's Done Is Done (feat. Jade & Marinoux)
- 官能のトリガー / Trigger チャイコフスキー「くるみ割り人形」
- スーパーフリーキンマーヴェラス / SupahFreakinMarvelous モーツァルト 魔笛より「夜の女王のマリア」
- 愛の証明 / Prove Me
- ヴィクトリー (feat. ジェイド) / Victory (feat. Jade) バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」
- スティル・スタンディング(feat. マリノックス) / Still Standing (feat. Marinoux) ガブリエル・フォーレ「パヴァーヌ」
提供:エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ
企画・制作:RO69編集部
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おそらく今作はジオにとって、思い描いていたような音像をスウィートボックス時代以来最も理想に近い形で作品化できたアルバムといってもいいはずだ(ちなみに彼は、本作でミュージック・ビデオの監督も自ら務めている)。コンテンポラリーなポップ・ミュージックとしての重厚感とクラシックの閃きの組み合わせがどれもかなり緻密に構築されていて、ただの思いつきで作れるようなものではないことは『ノクターン』の内容から明らかだ。あるいは“Everything's Gonna Be Alright”でモチーフにした“G線上のアリア(管弦楽組曲3番)”を再度取り上げた“至上の愛”がよりいっそう完成度の高い試みとなっていることからもそれは明白だろう。スウィートボックスでのブレイク時は、トラックの音こそよく耳にしたもののどこかアーティストとしての存在は薄かったが、今回はシンフォビアそのものに注目が集まるのではないだろうか。そのためにもジオのみならず、アディーシャありきのユニットとして育っていってほしい。