ボブ・ディランやノエル・ギャラガーを引き合いに出されているのは耳の早い読者ならすでにご存知だろう。即ちレトロ/ヴィンテージとラッディズムの融合と言われることも多々あるジェイク・バグ。だが予め言っておくと、この少年はありきたりな形容では説明し足りない破格の才能である。ここ数年、英国からはフォーク、ポップ、グライムetcまたはその融合、と形を様々に変えて男性ソロ・アーティストが登場してきた。いずれも合格点圏内が多くシンガーソングライターは所詮日本では売れないというのが定説になった感もある。しかしながらジェイクはそのすべてをひっくり返してしまうのではないか。
一聴したぶんには王道で良質な楽曲の集まりと思える本作。だが、“トゥ・フィンガーズ”を聴いてみてほしい。「飲んで思い出す/吸って忘れる」。それは、酸いも甘いも噛み分けた大人の言葉というよりも、めいっぱい背伸びした、退屈な現実への「くたばれ」なのだと思う。ああ、10代ってそんなものだ(った)と、子供から大人までが、このセンチメンタルで肝の据った、醒めた歌声に心を突き動かされる日は遠くないはずだ。そして素晴らしいのは、このアルバムのどの曲にも、アートワークでこちらを見つめるジェイクの目つきの如く、未来はかすかに希望に満ちていると思わせるところなのだ。もはや絶望からの脱出は、がむしゃらなアンチテーゼやパンクでは実現しようがない。「くたばれ」サインも裏返せばVサインであるという凄まじい説得力は、早くもアデルの凄みをも感じさせる。 (羽鳥麻美)