スクリーンで目撃するオアシスの「物語」の書き換え――『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』ロングレビュー

スクリーンで目撃するオアシスの「物語」の書き換え――『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』ロングレビュー
現在発売中のロッキング・オン11月号では、映画『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』のレビューを掲載!
以下、本記事の冒頭部分より。テキスト=粉川しの


9月、ギャラガー兄弟はベネチア映画祭に乗り込み、『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』のプレミア上映に揃って参加した。終演後、8分に及んだスタンディングオベーションを受け、リアムが満面のドヤ笑みでガッツポーズを決める横で、ノエルはまたしても感極まり、涙が滲む目元を照れくさそうに拭う姿がカメラに捉えられていた。「またしても」だ。彼は「Oasis Live’25」のステージでも度々涙ぐみ、本作の劇中インタビューでも、「(涙を隠すために)何度も客席に背を向けた」のを認めている。兄弟はベネチア前に揃って本作を初見し、その際は二人とも感極まっていたというが、少なくともリアムは再結成ツアーを通して、ファンの前で泣くことはなかった。オアシスのフロントマンたる自負が、彼をそうさせているのだ。
本作の字幕監修を任された関係で、私も既に何度か観ていた。だからべネチアのノエルの涙に驚きはなく、むしろ「一介のファンの私がここまで泣いたのだから、そりゃノエルだって泣くだろう」くらいに思ったのだが、これは普通に考えればおかしな話だ。オアシスのファンである自分と、オアシスの当事者であるノエルが同じ情動を得て当然だとするのは、流石に烏滸がましくないか?
しかし本作は、明らかに観客をノエルに感情移入させる構造になっている。対するリアムはロックンロールスターの再臨で観客を震わせ、30年前と変わらず笑わせ、その優しさで泣かせるが、最終的に「オアシス」として対象化されていく。
彼はオアシス再結成という事象のアイコンに、ある種ビブリカルな存在になっていくのだ。この構造は、彼らのナラティブを理解する上で重要な意味を持つのだが、詳しくは後述する。
本作は、観客がノエルと同じ目線でオアシスの物語を追うような錯覚を覚える、唯一無二のドキュメンタリーだ。再結成の喜びと不安を、ツアーの緊張と興奮を、全てを許し、許された先のステージで輝くリアムへの愛を、ノエルとの共感を、そしてオアシスと共にある人生の喜びを分かち合うような、至高の2時間だ。(以下、本誌記事へ続く)
オアシスの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
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