研ぎ澄まされた体温

アルバム・リーフ『フォーワード/リターン+トーリーズ・ディストラクション』
2012年01月09日発売
ALBUM
アルバム・リーフ フォーワード/リターン+トーリーズ・ディストラクション
かつてないほどに「バンド」としての手触りを感じさせながら、同時にどこまでも研ぎ澄まされた鉱石のような輝度と硬度を秘めた音の粒子。作為によってではなく、人間の鼓動と感情そのものによって静かに高揚の高嶺へと昇り詰めていくようなサウンドスケープ……ジミー・ラヴェルがアルバム・リーフという場所で探求してきた音風景の、ある意味究極と言うべき6thアルバム。楽曲そのものは内省的でメランコリックな趣きに満ちたものが多いが、M1・M3のトランペットの響きや、凍てつく風のようなアンビエントとヴァイオリンの彼方から浮かび上がるM4のダイヤモンドダストのようなギター&リズムのアレンジが、聴く者の心の襞の奥底を開放的な音の地平と直結してみせるあたり、驚きを通り越して戦慄にも似た感動を覚える。そして、文字通り「暗闇が光になる」と題されたラスト・ナンバーへ……ラヴェルが新たにLAに構えたスタジオでほとんどの楽曲を生み出したことも、その「自然体の厳粛感」につながっているのだろう。2枚組として同梱された映画『トーリーズ・ディストラクション』サントラの静謐な温もりも嬉しい。(高橋智樹)
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