昨年の『シーズンズ・オブ・マイ・ソウル』の手垢に汚れていない感触がとても良かったルーマー。それなりに苦労してのデビューとなるとどうしても初々しさや純度は低くなるものだが彼女の場合は、それが無かった。16歳の頃から放浪生活を送ったりという苦労話を知るとさらにそのまっすぐさが珍しく思えたが、この男性シンガー・ソングライターたちをカヴァーした新作を聴いているとそれが本物であったのがわかる。

一曲目は悲運のシンガー、Ｐ．Ｆ．スローンを歌った（ＲＣサクセションの“明日なき世界”はこの人作）ジミー・ウェッブのナンバーに始まり彼女が本物の歌い手であると同時に“聴き手”であることを示すじつにシブく、しかもいいところを押さえまくった選曲が並ぶ。タウンズ・ヴァン・ザント、テリー・リード、ロニー・レーン、ティム・ハーデンといった地味めの人からニール・ヤング、アイザック・ヘイズといった有名どころまで知名度はバラバラだが、曲が持つ孤独感が通奏低音のように流れ一枚のコンセプト・アルバムとして響いてくる素晴らしい作品だ。ベストは美しいフォーク・ナンバーとなったボブ・マーリィもの。これは泣ける。（大鷹俊一）