今に、自分に、真正面から向き合った

KUDANZ『僕とターヘルアナトミア』
KUDANZ 僕とターヘルアナトミア
タイトルの「ターヘルアナトミア」=解体新書、という言葉が象徴的だが、今作はササキゲン(G・Vo)の人生が赤裸々に表れた1枚になっている。こんな痛々しい場面まで、こんな辛かった心情まで綴らなくてもいいのに、とも思うけれど、そこには、自らの過去を利用しているような嫌らしさはなく、寧ろ、聴き手の心に寄り添おうとしている優しさが感じられる。きっと、この時代に隠すものなど何もないと思う、不器用なほど正直な人間なのだろう。もちろん、それだけではなく、表現者として、確かな才能も発揮されている。歌詞に関しては、事実を連ねるだけではなく、滋味深い物語に昇華している。サウンドも、歌という核を守りながら、フォーク的なすっぴんの音色から、ダイナミックで繊細なバンドサウンドまで、柔軟に行き来しているのだ。
 
ササキは仙台出身というところもあって(筆者もそうなので)どうしても震災のことを思い出して、胸が震えてしまう歌詞もあった。特に“汚れた獣”。こんなにも生々しく、でも、こんなにも温かい、多くの気持ちを代弁してくれているような楽曲、なかなか出会えない。(高橋美穂)
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