この「サントゴールド」とは基本的にフィラデルフィア出身のサンティ・ホワイトという女子のひとりユニットであり、多彩なコラボ陣を招いて形成されたサウンド・メイキング隊である。バンドとは確実に違う形態だし、サントゴールド=SSWでもない。もっと戦略的に「ポップ」を作り出そうとしているプロジェクト、と言えるかもしれない。
ダブ、ヒップホップ、レゲエ、ニューウェイヴ、バングラ、ディスコ、エレポップと、そのバックグラウンドの博覧とミクスチャーの的確さはM.I.A.と類似するパターンだが、サントゴールドの表現にはM.I.A.のように強硬なまでのハイブロウな刺激はあまりない。M.I.A.を念頭に置いて聴くとむしろ猛烈に違和感を覚えるほどわかりやすいポップ・ソング集である。代わりにそこに漂っているのはデビュー当時のマドンナのような、ポップ・カルチャーとはマテリアルでフェイクなものだという敢えての演出である。元レコード会社のA&Rだったというサンティ・ホワイトのバックグラウンドも、本作のそんな客観視をベースとする作風に拍車をかけているのかもしれないけど。そもそもの出発点が「売れるポップスを作ること」だったサントゴールドというプロジェクト。ぶっとびすぎていて孤立するタイプの天才ではなく、凡人の生体反応を知り尽くしたIQの高い人って感じの音なのだ。
ブラッグ・キッズにMGMTにこのサントゴールドと、今年も半分を折りかえしたところで新人レースが本当に面白くなってきた。(粉川しの)