そこには生前のレヴの歌も

アヴェンジド・セヴンフォールド『ナイトメア』
2010年07月28日発売
ALBUM
アヴェンジド・セヴンフォールド ナイトメア
昨年の年末にドラマーのレヴことジェイムズ・オーウェン・サリヴァンを亡くしたアヴェンジド・セヴンフォールド。今月号のヘッドラインでも最新の写真を掲載しようとギリギリまで待ったのだけど、バンドがレヴ不在の写真に苦悩しているという連絡が入り、間に合わせることができなかった。そうした失意にあったバンドが、レヴの死を乗り越えて彼の生前から取り掛かっていた音源を完成させたのが本作だ。

これまでのアヴェンジド・セヴンフォールド、特に『シティ・オブ・イーヴル』を愛聴してきた人にはガッツポーズのアンセム“ナイトメア”で幕を開ける新作。この曲、6分を超える長大な楽曲だが、本作のポイントはまさにそこにある。リリック的には、どの曲にもレヴへの想いを想起させるようなフレーズが散りばめられているのだが、そうした感情と呼応するかのように、楽曲も幾度も展開し、まだまだ自分たちの内面に渦巻くものには届かないと、どんどんと強大化していくという構図がある。そして、すごいのは、祈りの様相を呈したバラードもあるのだが、そうした追悼的な側面を持ちながら、このバンド特有の猥雑さもまったく失われていないことだ。「哀悼」でも、「悲劇」でもなく、「悪夢」。このアルバム・タイトルはバンドにとっての偽らざる本音だろう。彼らはレヴの死に当事者としての表現を試み、それを成就するためには、自分たちの積み上げてきたサウンドをまっとうするしかなかったのだ。Mシャドウズのボーカルもこれまで以上に、ぐっと幅を広げている。作らなければならなかった作品を彼らは一歩も引かずに作り上げた。(古川琢也)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on