ノスタルジアより激しく

シェリル・クロウ『100マイルズ・フロム・メンフィス』
2010年07月14日発売
ALBUM
シェリル・クロウ 100マイルズ・フロム・メンフィス
3月のジャクソン・ブラウンとの来日パフォーマンスを観たときにも思ったが、シェリル・クロウはどんどん年齢不詳の女になっていて、「真面目に衰える」ことなく、自分だけのストーリーを刷新している。今回の新作アルバムは60~70年代の王道ロックを参照しながらも音楽的にはどんどんアグレッシブになっていて、獰猛で野心的なグルーヴが全面に漂っている。タイトルは、ミズーリ州の自分の生まれ故郷を表したもの。が、ここで顧みられるのは、都会とスターへの憧れで胸を一杯にしていたかつてのシェリルの姿である。老人として生まれて若返っていくベンジャミン・バトンのように、48歳のシェリルは18歳の感性と活力で音楽と向き合っているようだ。

ゲストにキース・リチャーズが乱入(!)したり、ジャクソン5の“帰ってほしいの”を子供マイケルそっくりの声でカバーしたり、とにかくミーハー・パワーが最強。「アメリカの原風景」的な手堅い要素も持ちながら、そこからハミ出してしまうハジけた「過剰」が感じられる。それは未来への期待であり、無限の憧れであるような。さすが、水瓶座の女。(小田島久恵) 
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