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ブランデー戦記の音楽には憧れが詰まっている。レジェンドのロックスターや、自分よりも人生経験が豊富で大人な趣味を持っている貴方。そういう存在に少しの引け目を感じながら、文学的に描き出したのが前作EP『人類滅亡ワンダーランド』だと感じていた。でも今作は、一方的な憧れだけではなく、もっと身の回りのことや自分の感情にもフォーカスが当たっている。特に“Twin Ray”の《慣れないヒールも頑張るわ》《溢れる愚痴も/ぎゅっと聞いてあげるけど/時々それが寂しく感じるの》という素直さには驚かされた。前作ではひた隠しにされていた繊細な感情の揺れ動きが手に取るように伝わってくる。そんな健気な女性性を感じるフレーズ(あるいは“土曜日:高慢”のように頼りない男子を突き放すような歌詞!)は、二十歳すぎの若い世代のバンドが鳴らすと逆に新しく感じられて痛快だ。蓮月(G・Vo)らしい詩的な世界観を残したまま、より私たちの生活との接点を増やしてくれたように思えてドキッとさせられた。(有本早季)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年10月号より抜粋)
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