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どこか悲しげで切なくて、悔しさを滲ませながらも自身の弱さを受け止め、愚直なまでに大切な人と向き合い、涙をぬぐいながら今を真摯に、懸命に生きる。それがこれまでの楽曲から浮かび上がるメインソングライター・ちとせみな(Vo・G)の人物像だった。だが今作にはこれまでにない視野の広がりが感じられる。天を仰ぐような軽やかさだ。歌詞に綴られた素直で純粋な意志を際立たせるのは、潔いサウンドデザイン。硬派なギターが言葉の輪郭を深く切り取り、ドラマチックに展開するドラムとメロディアスなベースがそこに鮮やかな物語を加える。中でも次々と重なる歪んだギターと柔らかいコーラスが溶け合う間奏は、彼女たちが持ち合わせる繊細さと熱量が淀みなく表現され、隅々まで清く輝かしい。治りきらない傷を抱えながらも一歩一歩丁寧に歩みを進めていけるのは君と生きているから。メンバーはもちろん3人の楽曲を愛する人々とも心をひとつにする、大きく健やかな愛に満ちたアンセムが誕生した。(沖さやこ)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年6月号より抜粋)
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