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合奏する喜びを起爆剤としながら感情のリミッターを解除し、歌う言葉を圧倒的に率直なものにできるバンドがKALMAだ。8曲が収録されている今作も、鳴り響いている音に負けないくらい直球の感情表現が各曲に刻まれている。たとえば“ABCDガール”は募り続ける恋心と現実のギャップによって溜め込まざるを得ない衝動について歌っている。生々しい妄想描写を切れ味抜群のサウンドによってキャッチーな仕上がりへと昇華するのは、勢いに満ちたバンド演奏を効果的に活かせる作風のひとつだと思う。そして奏でる音を追い風とした素直な感情表現がシリアスなタイプのテーマに向かったとき、その歌はリスナーの胸を激しく打つこともできる。選んだ生き方に対するまっすぐさが滲む“夢見るコトダマ”や“ムソウ”は、懸命に自身の人生に向き合っている人にとって他人事ではないのでは? 3ピースバンドというシンプルな編成を表現の自由さと鮮度に自然な形で結び付けられているのが、現在のKALMAの強さだ。(田中大)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年11月号より抜粋)
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