あまりにも記名性の高い中尾憲太郎のルート弾き。手数の多さがもたらす騒々しさがそのまま快楽性の上昇にリンクする藤田勇のドラミング。ART-SCHOOLにこのふたりが合流し、日本のオルタナドリームバンドと化してからすでに10年以上経つが、かつて本作ほど各々の強烈な個性が遺憾なく発揮された作品はなかったはず。そして、戸高賢史は全編で非凡なフレージングを聴かせるだけでなく、10曲中2曲のメインボーカルを担ってさえいる。そんな本作に対し木下理樹は「最高に純度が高い、ART-SCHOOLのアルバムを作るんだという一心」だったという。言うまでもなく、ART-SCHOOLの核心は木下理樹である。木下の詩曲を最高の形で鳴らすこと、それこそがこれまで何より優先されてきた。しかし、未曾有の苦難の時期を過ごした現在の木下がART-SCHOOLをやるためにはこの4人の集合体である必要があったのだ。それを自覚した影響からか、昨年の復活EPと比べても本作における木下の歌は遥かに安定している。そう、本作に特別な輝きを与えているのは、「ロックバンドであること」の美しさである。(長瀬昇)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年7月号より抜粋)
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この4人だから、ART-SCHOOLに
ART-SCHOOL『luminous』
2023年06月14日発売
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