ささやかでありふれた、命という一大事
どこを切ってもホームラン級ポップが溢れ出す全6曲。キャリア初となるEPで、これほどのクオリティを整えてくるのはさすが。五輪閉幕後もあらゆる分断や諍いの向こうで人々の笑顔を照らし出す“SMILE~晴れ渡る空のように~”や、人生の甘さ辛さ、ほろ苦さをまとめて描き切る大人のビッグメロディ“金目鯛の煮つけ”、そして来るアリーナツアーへの招待状とでも呼ぶべき高揚感“炎の聖歌隊 [Choir](クワイア)”が並ぶ。胸をヒリヒリシクシクとさせる桑田節ラブソングをお待ちかねのファンには、華々しいフィリーソウルの“Soulコブラツイスト〜魂の悶絶”や、ファンキー&ブルージーな“さすらいのRIDER”で応え、初期ドクター・ジョン風のサイケグルーヴと和の情緒が魔法のようにミックスされる“鬼灯(ほおずき)”は、戦火の空に忘れ得ぬ物語を焼き付けてゆく。フルアルバムの完成を待つ、という選択肢もあったのかもしれない。しかしなぜ桑田が初のEPという形態を選んだのかと言えば、それは「ささやかでありふれた、命という一大事」に想いを馳せるこの楽曲たちが、今の我々にとって急を要するものだからである。(小池宏和)
桑田佳祐がいる、それが希望そのもの
華やかで軽やかなイントロが、“夕方 HOLD ON ME”を思い出させる、そして後半の転調がなんともしびれる“Soulコブラツイスト〜魂の悶絶”ではじまり、「民放共同企画“一緒にやろう”応援ソング」として書かれたものだが、そのお題をはるかに上回るスケール感を持った“SMILE〜晴れ渡る空のように〜”や、桑田ど真ん中なサビメロがたまらない、そして大サビがさらにたまらない“金目鯛の煮つけ”などを経て、やっぱり桑田にはこういうテーマの曲も歌い続けてほしい、とうれしくなる“鬼灯(ほおずき)”で終わる、全6曲。現在この国にいる人の多くが、ここまでしんどい世の中は経験したことがないのでは、と思うが、そんななかにあっても、なんとか希望を捨てずにいるために歌われている、どの曲も。しかも、自分のファンだけでなく、たまたまこの曲が耳に入る可能性のある人まで含めて。桑田佳祐がいてくれてよかった、と、“勝手にシンドバッド”以来43年くらい思わされっぱなしだが、今ほど強くそう感じる時は、ないかもしれない。あとタイトルも最高。(兵庫慎司)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2021年10月号より)
現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』10月号表紙巻頭に桑田佳祐が登場!
掲載号のご購入はこちらから