プレイ・ボタンを押して耳に飛び込んできたサウンドから感じたのは、ラスト・デイズ・オブ・エイプリルの90年代〜2000年代エモの名盤2nd『レインメーカー』(1998)や3rd『エンジェル・ユース』(2000)を聴いたときに胸を射抜かれた、あの感触。前作『シー・オブ・クラウズ』からは6年ぶりで10枚目となる今回のアルバムは、そんな懐かしいタイム・カプセルを開けたときのような甘い感傷が湧き上がってくる。
それと同時に、ソングライターであるカール・ラーソンのポップ性の高さや、変わらない(これが本当に!)儚げで繊細な歌声に、笑みがこぼれてしまう。幸せな時間を味わうアルバムだ。
このアルバム『イーヴン・ザ・グッド・デイズ・アー・バッド』は、ベーシックをテープでのアナログ・レコーディングで行ない、その後カールの自宅スタジオでオーバーダブ等の肉付けがなされたという。そのアナログな手触りが、今回のシャイニーなギター・サウンドや、シンプルでいてどっしりと広がりのあるドラミングによく似合う。
1曲目となるタイトル曲の切なくもメロウなバンド・アンサンブルや、“ハド・イナフ”でのメロトロンの哀愁感や、楽器の余韻によるちょっとした空気の歪み等、懐かしく肌に馴染むような音がさらにグッド・メロディを引き立て、曲を輝かせている。デジタルでも様々な効果や洗練された美しさや艶っぽさを生み出せるが、ここに封じ込められた魔法がかった時間は魅力的だ。
近年の作品は、落ち着いたフォーキーなイメージもあったゆえに、今回のこれぞラスト・デイズ・オブ・エイプリルという、ノイジーにギターをかき鳴らし、少年の面影があるカールのボーカルが聴こえてくるのが個人的には嬉しい。なんていうと懐古的すぎるだろうか。(吉羽さおり)
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。
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