ヒット曲を連発し続ける絶対王者、ドレイク。「歌」と「ラップ」の切り替えを誰よりもスムーズに機能させ、R&Bとヒップホップの境界線を完全に消し去っちゃうという、彼が2010年代の初めに確立させた方法論は、今や21世紀のポップ界の「ニュー・ノーマル」になりつつある――ストリーミング全盛期の今の時代、「ジャンルレス」こそは最強の「ジャンル」なんだ。
そんなドレイクが、またまた偉業を達成した。最新EPである本作は、3月5日にリリースされるやいなや、ビルボード誌のシングル・チャートでトップの座に――しかも1位だけじゃない。なんと、収録された全3曲がチャートの1位と2位と3位を一気に独占したのだ。過去にはビートルズも同じことをやってるけど、初登場の週での記録となると、今回が史上初の快挙だという。強い。強すぎる!
今年中にリリース予定の6 thアルバムの“助走”でもある今回の3曲は、ドレイクの魅力を三者三様的に楽しめる点で初心者にもおススメである。1曲目“What's Next”は18年の大ヒット曲“ゴッズ・プラン”を彷彿させる、王道ど真ん中のトラップ・ソング。2曲目“Wants and Needs”は、今が旬のラッパー、リル・ベイビーの客演曲。そもそもリル・ベイビーが売れたのはドレイクとコラボした18年の“Yes Indeed”がきっかけで、すべては因果応報なのだ。
そして朋友リック・ロス参加の3曲目“Lemon Pepper Freestyle”は、ドレイクがアルバムの最後でよくやる告白風のラップをたっぷり堪能できる1曲。彼のリアルな「日常生活」がフリースタイル的に綴られるのだけど、ドバイ王子との交流から息子の授業参観まで、今回も楽しいネタ満載。コロナ禍とかいっさい関係なく、2021年も、王者はやっぱり王者なのでした。(内瀬戸久司)
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