その加速感の先に描く世界
まふまふ『神楽色アーティファクト』
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ALBUM
《歪んだ運命は 幾つもの禁忌の翼/望まれかざした刃が/手のひらを返して罪と成る》と熾烈な闘争のイメージを突き上げる“サクリファイス”。カラフルな輝度越しに《にゃ にゃ にゃ/にゃーっと戦いて走り出せ》の歌声が弾み回る“すーぱーぬこになれんかった”。《事切れぬものなんてないのに/救えるものひとつもないのに》と切迫感に満ちた絶唱を響かせる“生まれた意味などなかった。”前作『明日色ワールドエンド』以来2年ぶりとなるこのアルバムの、実に20曲に及ぶ楽曲におけるまふまふのハイトーンボイスは、生命力の躍動であり、嘆きであり、歓喜であり、抑え難いセンチメントであり、行き場のない悲鳴でもある。極彩色の感情とシチュエーションと物語をエクストリームなまでに美しく咲き誇らせる唯一無二のボーカリゼーションが、どこまでもリアルに僕らの心を震わせてやまないのは取りも直さず、今作が「整合性なき時代を貫いて生きること」を劇的なまでに鮮やかに体現しているからに他ならない。ビートと歌の加速感以上に、さらなる「その先」を目指して疾駆する才気が結晶した名盤。(高橋智樹)