昨年10月、突然発表されたザ・ラカンターズの復活ニュース。びっくりしたのはもちろんだが、昨年の大傑作『ボーディング・ハウス・リーチ』でまったく錆びることのないフリーク・アウト魂を炸裂させてくれていたジャック・ホワイトの奔放なイマジネイションが、次のステージとして旧友であり名ソングライター、ブレンダン・ベンソン(G、Vo)、そしてザ・グリーンホーンズのジャック・ローレンス(B)、パトリック・キーラー(Ds)らとのユニットを再び動かそうとの決意に至る気持ちを想像するだけで、期待は激しく膨らんだ。そして無駄に焦らされることなく届けられた2つの新曲“Sunday Driver”、“Now That You're Gone”は10年前のセカンド・アルバム『コンソーラーズ・オブ・ザ・ロンリー』のアニバーサリー・エディションに付けられる7インチ・シングルから。
ラカンターズのイメージと言えばガレージ・パンクとハード・オルタナ魂を持ったギターが壮絶にぶつかり合うサウンドを背景に、キャッチーなメロディがくり広げられるもので、ジャックを始めメンバーたちが何より楽しがっているイメージだった。メグとのザ・ホワイト・ストライプスの世界的な成功を達成し、旧友たちとより尖ったサウンドを求め、ここで刃をさらに磨きザ・デッド・ウェザー、ソロへと振り幅を大きくしていったわけだが、近年も『ボーディング〜』はもちろんのこと、サードマン・レコーズの順調な歩みは続いており、その中に改めてラカンターズを位置づける意味は、もうじき発表されるはずのアルバムで驚きと共に明らかになるだろう。
その予告編とも言うべき2曲は、倦怠感漂うイントロから一気にガレージ色濃厚なギター・サウンドが暴れ回り、中間部でサイケデリックな空間が広がる“Sunday Driver”と、テンポを落としたプリミティブなビートにじっくりと歌い込んでクラシック・ロックの王道を意識させる“Now ThatYou’re Gone”で、どちらも甲乙付けがたい対照的な好ナンバーだ。ボーカルが突き刺さる前者、メランコリックなハモりがどこか懐かしい風景を広げ、普遍的な魅力が詰まった後者と、それぞれおいしいスポットが異なっているのもいい。
この2曲を手がかりにアルバムを予想すれば、前作以上にパーマネントなバンド色を強めたものになるのじゃないだろうか。前ジャケットにあった漂泊のガレージ・ジャグ・バンドが、各地をくまなく10年にわたって演奏しまくってきて磨き上げられたようなアイデアとコク深いサウンドが、くり広げられるはずだ。
一秒でも早く聴きたい!! (大鷹俊一)
各視聴リンクはこちら。
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。