削ぎ落とすという最強武装

ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー『ヤングブラッド』
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ALBUM
ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー ヤングブラッド

そのポップな音の手さばきの一方で、前作『サウンズ・グッド・フィールズ・グッド』までは色濃く残っていたグリーン・デイブリンク182などポップ・パンクの蒼きルーツ感を、今作までの3年間の間に丁寧に削ぎ落としたファイヴ・セカンズ・オブ・サマーの音像は、いよいよスムーズかつユニバーサルなポップ・ロックとしての究極形へと近づきつつあるようだ。ということを、この3作目のアルバムは如実に物語っている。

前作以上に外部プロデューサー&ソングライターを積極的に導入し、自らの音楽性を徹底的に解体&再構築したことが窺える今作。“ウォント・ユー・バック”、“ヤングブラッド”といったシングル曲での非バンド的な志向性のミックスはもちろんのこと、サンプリングの如きエフェクトの施された“ムーヴィング・アロング”のドラムのフィルなど、自分たちのメロディワークを最大限に浮き彫りにするためにありとあらゆるクリエイティビティを動員していることが伝わってくる。しかし、それによって彼らのアイドル化が進んだかというとまるで逆で、“ベター・マン”や“ホワイ・ウォント・ユー・ラヴ・ミー”といった楽曲に顕著な「ハイブリッドな骨太感」とでも言うべき新たなバランス感が、今作のサウンドスケープに表出しているのが興味深い。

オーストラリアからデビュー盤&2ndと2作続けて全米チャートを制し、今や新世代ロックの期待を一身に背負う5SOSは、不屈の音楽探究心ゆえに自らの音像に革新をもたらし、別次元の多幸感と高揚感をそのアンサンブルに内包してみせた。本編最後を飾る“ゴースト・オブ・ユー”の、清冽にして雄大なるパワー・バラードぶりは、彼らの「今」のスケール感をリアルに映し出している。(高橋智樹)



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ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー『ヤングブラッド』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」8月号に掲載中です。
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ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー ヤングブラッド - 『rockin'on』2018年8月号『rockin'on』2018年8月号
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