日本での初ライブとなったリナ・サワヤマのステージは、アップリフティングで開放的でパワフルなダンス・ポップが次々にドロップされ大いに盛り上がっただけでなく、おそらく今後も語り継がれていくだろう象徴的なものとなった。
日本語によるMCで、自身がバイセクシュアルでそのことを誇りに感じていることを明言した上で、日本における同性婚支持とLGBTQ差別禁止法制定の必要性を訴えたのだ。それらがないのはG7では日本だけであり、それを「恥ずかしいことだ」とも。それは明確な社会的メッセージだった。
性的マイノリティの存在を祝福するポップミュージックを、日本にルーツを持つ最高にカッコいいアーティストが生み出していることに励まされる日本のLGBTQの人びともたくさんいるはずだ。
そんなリナ・サワヤマが9月16日にリリースするセカンドアルバム『ホールド・ザ・ガール』は、自身が過去から抱えてきた傷を受け入れ、過去の自分自身(ザ・ガール)を抱きしめることが主題になっているという。
サウンドはカントリーの要素を取り入れるなどさらに多様になり、そして、ダンスポップとしてもよりパワフルな内容に仕上がっている。
間もなく発売となるロッキング・オン10月号では、サマーソニック出演前の彼女におこなったインタビューを掲載している。
日本での初ライブを控えた気持ち、新作のメッセージ、そしてライブで社会的メッセージを発信する意味など、すべての質問にきわめて明晰に、思慮深く回答してくれた。
その知性、その真摯さは、リナ・サワヤマがいよいよビッグなポップスターになっていくだろうことを予感させるのに充分だった。彼女がさらに広い場所へと羽ばたく瞬間をどうか見届けていただきたい。(木津毅)