グラミー賞で5部門にノミネーション! デビューALで天下を取ったカーディ・Bの何がそんなに凄いのか?
2019.01.16 17:10
2018年のグラミー賞授賞式でブルーノ・マーズと共に“Finesse”をパフォーマンスしたカーディ・Bが、今年のグラミーでは「最優秀レコード賞」、「最優秀アルバム賞」を含む5部門でのノミネートを手にした。現在26歳の女性ラッパーは、なぜここまで評価されたのか?
NYのブロンクス出身のカーディーは、ストリッパー時代にインスタグラムとVineで有名になり、2015年からVH1のリアリティ番組『Love & Hip Hop: New York』に出演してリアリティー・スターになった。それからラッパーに転身し、2枚のミックステープを発表後、2017年にメジャー・デビュー・シングル『ボダック・イエロー』で全米チャート1位を達成。ゲスト参加のない女性ラッパーの曲が全米1位を記録したのは史上2度目で、1998年のローリン・ヒル以来の快挙だった。
そして2018年にリリースしたデビュー・アルバム『インヴェイジョン・オブ・プライバシー』は全米アルバム・チャート1位を達成、批評家からも賞賛された。さらにラテン・ルーツを反映したシングル“I like It”が全米1位を記録。この曲が「最優秀レコード賞」にノミネートされた。
さらに、ゲスト参加したマルーン5の“Girls Like You”でも全米1位を達成し、この曲もグラミーのノミネートを獲得した。ちなみに、昨年アメリカでカーディと並んで200万枚以上のアルバム・セールスを達成したのは、ポスト・マローンとミーゴスのみだ。
カーディが頂点に立った理由は、彼女の圧倒的なリアルさにあると思う。リアリティ番組で素の面白いキャラクターが大人気になった彼女は、ラッパーとしてデビューする際に、他と一線を画すキャラを作る必要がなかった。彼女はありのままのキャラで勝負に出て、ありのままで勝利した。リリックから言動まで、文字通り全てを曝け出す彼女は、見ていて痛快である。
彼女は昨年7月に女児を出産したが、9月に父親であるミーゴスのオフセットの浮気が発覚して離婚を発表。その後クリスマスに彼と一緒にいる姿をパパラッチされると、「セックスしたかっただけ!」とぶちまけた。
ストリッパーとして稼いで家庭内暴力を奮う彼氏から逃れたという過去を持つカーディーは、とりわけ男性中心のヒップホップ界で、他のラッパーやソングライターに頼らずに自力でのし上がる努力をしてきた。私はそんなカーディ・Bに、新手の新世代フェミニストの誕生を感じている。一度真剣に『インヴェイジョン・オブ・プライバシー』を聞いてみて欲しい。下品ではあるが最高にキャッチーなフレーズを散りばめた反逆的かつ真摯な音楽の中に、究極のガール・パワーが脈打っている。(鈴木美穂)