チバユウスケの追悼記事に寄せた序文(ロッキング・オン・ジャパン最新号より)

チバユウスケの追悼記事に寄せた序文(ロッキング・オン・ジャパン最新号より)
チバユウスケは、ミッシェル・ガン・エレファントのメジャーデビュー前のコンベンションライブで、集まった業界人を前に「ロックをダメにしたのはお前らだ!」と言った。
今は、こんな事を言うロックバンドはいない。そんなこと言ってなんか意味あります?という感じだろう。そう、意味などない。でもチバユウスケは言った。言いたいことを言ったのだ。彼はそういう人間で、ミッシェル・ガン・エレファントはそういうバンドだった。
いいか悪いか、正しいか正しくないか、そんなことはどうだっていい。自分自身が何を感じているか、何を思っているかを恐れずに吐き出すこと、そこからロックは生まれる。それが共感されるかどうか、支持されるかどうか、人の心を動かすかどうか、それは単なる結果でしかない。それがロックの基本原理だ。チバは、ミッシェルは、その基本原理そのものだった。
60年代や70年代ならともかく、90年代半ばにそんなロックバンドが新たに出てきたことは衝撃だった。そしてさらに驚くべきことには、彼らのアルバムのうち6枚はランキングのベスト10内に入り、幕張メッセや大阪城ホールをツアーで回り、Mステに出演して日本中をロックに巻き込んだのだ。そう、ロックバンド・ミッシェルは多くの人に共感され、支持され、心を動かした。純粋なロックが生んだ「結果」として、それは起きたのだ。
ROSSOを経て、The Birthdayでは、ミッシェルの頃から滲み出していたチバの優しさやロマンや包容力が曲や歌詞の中に溢れるようになった。彼の中で言いたいことが、人生の歩みの中で少しずつ広がっているのを感じるのが、The Birthdayを追う喜びでもあった。真っ暗闇に飛び込んでいくチバを追いかけていた感覚から、ふと気がつくと時には隣で微笑んでいるチバを感じるような、そんな感覚がThe Birthdayのロックにはあった。
この先チバがどんな言葉とメロディを歌うのか、それを見届けたかった。正しさや意味なんてなくても一瞬で全てがわかるチバ独特の言葉と歌を聴いて、そこでチバが見ている光景を見届けたかった。
それがもう叶わないことがとても悲しい。(山崎洋一郎)
山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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