Mr.Childrenに前回インタビューしたのは、ホール・ツアー『虹』が終わって、その後しばらくしてからホール・ツアー『ヒカリノアトリエ』が始まるという、特にリリース物があるわけでもない、いわゆる「合間」の時期だった。
僕が何気に「そういう時期に、あえてインタビューしませんか?」と声をかけたら、すんなりOKが出て、僕自身「え?本当に?」と思ったのを憶えている。
メンバーとスタッフの話し合いの中で、特に田原さんが「いいんじゃない?」と賛成してくれたらしい。(ありがとう! 田原さん)
そもそもMr.Childrenは、普段はもちろん、リリースのタイミングでもそれほど取材を受けないバンドだ。
シングルはもちろん、アルバムのタイミングでも数限られたインタビューしか受けない。
あとはテレビの歌番組に出るぐらいだ。
そんな彼らが「合間」の時期に受けてくれたのだから、きっとこれからのミスチルはそれまでのミスチルとはいろんな意味で変わったんだな、過去のパターンや型から解放されて新しいやり方で歩んでいくんだな、と思ったのを憶えている。
過去になかったパターンと言えば、その後いくつか続いた「対バン」もそうだ。
だいぶん昔──12年前にザ・ピロウズとの対バンというのがあったが、いきなり最近になって2015年のアジカン、エレカシ、小谷美紗子、くるり、ヒートウェイヴとの対バン・ツアーからの、去年のONE OK ROCK、今年のエレカシ(2015年のRADWIMPSもあった!)と、最近のミスチルはこれまでの25年の歴史の中でも一度もなかったような対バンの季節を迎えている。
大きな存在であるがゆえに、対バンと言ってもそう簡単には実現できないさまざまな事情や困難があるだろうけど、それを乗り越えて次々と実現しているのは、これまでの殻を破って新しい道を歩こうという強い思いがあるからだと思う。
新しいミスチル、これまでのパターンから変わったミスチル、という意味でもっと明らかなのはサウンドだ。
一番わかりやすいのはライブで、以前はメンバーはクリック音を聴きながらそれに合わせて演奏し、その演奏の上にさまざまなコンピューターによる打ち込みのビートやストリングスやシンセの音が乗っかってお客さんの耳に届く、というのがミスチルのライブの形(多くのバンドはこの形をとっている)だった。
でも、2016年のツアー『虹』では打ち込みを全廃して、ステージ上の演奏者による生の演奏だけで成立するホールツアーをスタートした。
それによってステージの上の演奏者としてのスキルやミュージシャンシップが鍛えられ、自分たちが奏でる音の繊細さを再確認した彼らは、その後のドーム&スタジアム・ツアー『Thanksgiving 25』で、今度は生の演奏の繊細さにさらに従来の肉体性とデジタルのダイナミクスを加えた、過去最強のサウンドをスタジアムに放った。
そんなふうにして、今のMr.Childrenはこれまでのやり方のパターンから解放されて、自分たちの殻を破って新しい道を進んでいる。
それが曲からも、歌詞からも、サウンドからもはっきりと伝わってくるのがこの最新アルバム『重力と呼吸』だ。
このアルバムには自由なMr.Childrenが鳴っている。
それを感じ取りながら、何ならメンバーと一緒に楽しむように聴けるのがこのアルバムであり、それこそがこのアルバムの最大のメッセージであり、そしてそんなアルバムはこれまでにはなかった。
まさに新しいMr.Childrenの、新しいアルバムだと思う。
(山崎洋一郎)
ロッキング・オン・ジャパン最新号より
今のMr.Childrenとは何か? 新作を聴いて、インタビューして感じて考えたこと
2018.10.10 17:16