レッチリの新作を僕はこう聴いた
2016.06.22 20:50
やはり奇跡のバンドは奇跡を起こすし、伝説のバンドは伝説を作るんだな、と思った。
レッド・ホット・チリ・ペッパーズの新作のことである。
新作用に曲を書き溜めていたが、フリーが骨折して制作が先送りになった。
そのために長年のプロデューサーであるリック・ルービンとスケジュールが合わず、新たにデンジャー・マウスのプロデュースで制作することになる。
だがデンジャー・マウスは書き溜めた曲にボツを出し、まったく新たに書くようにメンバーに要請、それによって今作はこれまでのアルバムの作風とは大きく変わり、ナイジェル・ゴドリッチがミキシングをしたことによってさらに未知のレッチリ・サウンドとなって完成したーーーのがこの新作『ゲッタウェイ』である。
偶然とアクシデントが重なって波乱の運命を辿ったようにも見えるが、実際にこのアルバムを聴けば、すべてが必然のもとに起こったのではないかと思うぐらい見事な進化のアルバムになっている。
レッチリといえども、50歳を越えて自分達のスタイルや音楽性を大胆に変えるのは勇気がいるし、その必要があるのか?という疑問もあるはずだ。
そんな時、フリーが骨折し、プロデューサーが変わり、曲を捨てさせられ、全く新しい音楽が生まれる、というこの流れは奇跡とか伝説と呼ぶべき流れだと思う。
いや間違いなく、数年後にはこのアルバムのエピソードはレッチリの奇跡の一つとして語られているはずである。
そんなことを噛み締めながら聴くとさらにこのアルバムの味わいは深まる。
思えばレッチリのアルバムって全部そういうアルバムなのである。
(山崎洋一郎)
(ロッキング・オン8月号編集後記より)