トゥールがついに来日する! 単独公演としては2007年2月以来およそ19年ぶり、オズフェス・ジャパン2013からみても12年半ぶり。自分は後者に立ち会えたが、本当に素晴らしいパフォーマンスだった。史上最高のロックバンドの一つという惹句は看板に偽りなし。チケット代は高額だが、ライブの素晴らしさに比べれば安いと言い切れる。音楽に浸ることが好きな人であれば間違いなく楽しめるので、ぜひこの機会に体験してほしい。
トゥールは「オルタナ」「アートロック」「プログレッシブメタル」「サイケ」など様々なジャンル名で語られるが、そのいずれかというよりも、それら全てを融合し唯一無二の個性を生んだバンドとみるのがいいだろう。80年代のキング・クリムゾンやラッシュを介してプログレとポストロックを繋ぐラインと、ブラック・サバスからブラック・フラッグなど経由でグランジ/オルタナやドゥーム/ストーナーに繋がる(つまりはメルヴィンズ的な)ライン。それらが、60年代以降の様々なジャンルで培われてきた瞑想感覚と、メタルおよびパンクの質感&進行感をこの上ないバランスで折衷したサウンドのもとでまとめられることにより、他にない極上の滋味が生まれる。トゥールは難解だと言われることも多いが、柔らかい闇に落ちていくような静寂と極上のヘヴィロックパートが交錯する曲構成はわかりやすく、聴き手の集中力を無理なく引き出し深い没入感を与えてくれる。こうした瞑想音楽としての効き目に優れているからこそ、音源作品とライブの両方で大きな人気を得ることができたのだろう。神秘的な魅せ方と理屈抜きに快適なプレゼンを両立させる、至高のエンターテインメント。それこそがトゥールの音楽の凄さなのだと思う。
今回もう一つ重要なのが、横浜・神戸ともにアリーナクラスの大会場だということ。トゥールのライブはVJやライティングも素晴らしく、それをアメリカと同等の規模で体験できるのは有り難い。今回のツアーではアジア公演は日本のみとのことなので、海外から来るファンも多く盛り上がるはず。必見だ。(和田信一郎)
トゥールの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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