タック・スミス&ザ・レストレス・ハーツ――会心の2ndアルバム『ならず者の代償』を引っ提げての初来日直前インタビュー

タック・スミス&ザ・レストレス・ハーツ――会心の2ndアルバム『ならず者の代償』を引っ提げての初来日直前インタビュー

現在発売中のロッキング・オン10月号では、タック・スミス&ザ・レストレス・ハーツのインタビューを掲載!
以下、本インタビューの冒頭部分より。



●あなたは前回のインタビュー(本誌2月号掲載)で「音楽家である以前に音楽オタクであることを自覚している」と認めていました。実際、作曲するにしろアルバムを作るにしろ、一番大変なのは、そんなオタクである自分自身が満足できるものを作ることなのでは?

「いきなり鋭いツッコミ(笑)。確かにそうだね。なにしろ超がつくほどのオタクだから、放っておいたら超マニアックでニッチな方向に簡単に振り切ってしまいがちなところがある。ただ、今作に関しては、そういう狭い視野を一切捨てて、愛してやまない自分のルーツとなるものをすべて合体してお届けしてやろうと考えたんだ。しかも今回のアルバムでは自分の声を見つけたという実感がある。前回までの自分が、これまで影響を受けてきた音楽からガンガンに拝借しまくっていたとすれば、今回はそれらの影響を全部合体させて自分の声にまで昇華できていると思えるんだ。しかも今回の『ならず者~』に関しては、作詞作曲はもちろんのことプロデュースもすべて自分で手掛けていて、楽器やレコーディングまわりもほぼ自分でやっている。まさしくフルコース状態だよね。しかも作曲段階でのインスピレーションの降り方がめちゃくちゃすごくて、自分の内側がエラいことになっていた。どんな状態にあったのかを分析するのには5年くらいかかるかもしれないけど、まさにフロー状態というか、すべてが自然の流れに沿っていて、宇宙の意思と一体化しているかのような感覚だった。宇宙から背中を押されているような感じで、軋轢とか摩擦が一切ないままにスーッと流れていったんだ。それって、自分が正しい方向に向かっているサインだろ?」

●ええ。実際、各収録曲にはあなたの根源にあるさまざまな影響が見てとれます。ただ、それがいわゆるパクリみたいに感じられないのは、音楽に対する愛情や思い入れの深さが感じられるからです。今作からは、たとえばチープ・トリック、シン・リジィ、トム・ペティを思い起こさせるものをとても感じさせられました。
 
「これだよ、これ! これだから、日本のインタビューを受けると『マジでわかってんな!』と思わされる(笑)。細かいところまでちゃんと見てくれているうえに、ベースになる音楽に対する知識や造詣が半端ないし、普通の人間が気付かないところまでちゃんと聴いてくれてるのがわかるから、こっちも『よっしゃ!』って気になるんだ。実際、チープ・トリックには相当思い入れがあるし、自分の主たる影響源がそこにあると言っても過言じゃない。加えてELO、デヴィッド・ボウイにザ・ビートルズといった、いわゆるエッジの利いたパワーロックが俺の基盤にあるんだけど、同時にトム・ぺティ、ボブ・シーガー、ヴァン・モリソン、ブルース・スプリングスティーンといった語り手たちにも心酔している。

俺は地方の田舎町で、労働者階級の人たちばかりに囲まれて育ってきたから、どうしてもそういう人たちの生き方というか人生のストーリーに関心が向かってしまう。シン・リジィのフィル・ライノットが描く曲中の登場人物やストーリーに強烈に惹かれる理由もそこにある。まさに自分の生い立ちそのものみたいな、いわゆるワーキングクラスが直面する厳しい現実が背景にある。まさに80年代ロックの煌びやかなパーティみたいな世界の対極だよね。それが自分の出所であり、昔から馴染んできた世界だから、どうしたってそこに自分を重ね合わせてしまう。結局のところ、俺が音楽に求めてるのは真実であり本質なんだ。というわけで、今名前が挙がった表現者たち全員を、ただただ大尊敬しているよ」
(以下、本誌記事へ続く)



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